「遅すぎたけど、今やっとわかった。働けるのはありがたいって。まして俺は生活保護まで受けたから、10円でも20円でも社会に還元したいしね」

 田崎さんは何より健康に気をつけている。103歳になる母に時々会いに行くが、そのときに元気でかくしゃくとしていたいからだ。「さんざんやんちゃしてきて、お袋より先に死ねないじゃない」と笑う。

 働き続ける高齢者だけでなく、田崎さんのように生活保護を受ける高齢者も年々増えている。

 高齢社会白書によると、生活保護を受けている65歳以上の人は2014年に92万人。65歳以上人口に占める比率は、04年の2.1%から、14年には2.8%に増えた。

 いつ高まるかわからない老後の不安。自分のペースで少しでも稼ぎ、蓄えを増やすことも大切になる。

 高齢者が仕事を探せる身近な場が、シルバー人材センター。全国の市区町村ごとにあり、定年退職した人ら高齢者に仕事を紹介している。60歳以上の人が入会でき、会員は72万人。「自主・自立、共働・共助」が理念の組織で、2千円前後の年会費を払う。

 仕事で社会や地域とつながり、生きがいを感じてもらうことがセンターの目的だ。働く人は収入を得られるメリットがある。新入会員へのアンケートによると、入会動機は「生きがい・社会参加」34%、「健康維持・増進」23%、「経済的理由」19%だった。

「最近の傾向として、経済目的で働く方が多くなっていることは確かです。お孫さんへのお小遣いや生活費の足しなど、使い道はさまざまだと思います」(全国シルバー人材センター事業協会事務局長の今野文平さん)

 働く時間は週20時間または月10日ほど。就労日数にもよるが、平均月3万5千円ほどの収入になる。

 紹介されるのは、短期の臨時的な仕事がほとんど。受け付け・筆耕・宛名書きなど事務、補習教室やパソコン指導など専門的・技術的な仕事、空き家管理や子育て支援などがある。今野さんは「趣味を生かせる観光ガイドや遺跡発掘補助作業なども人気」という。

 働くことは本来、喜びであり、生きがいにつながるはず。過労老人と呼ばれない働き方の高齢者が、一人でも増えてほしい。

週刊朝日 2016年12月16日号

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