性交時の女性の潤い不足を解消する水溶性の「リューブゼリー」」薬局、ドラッグストア、ネットなどで買える (撮影/大野洋介)
性交時の女性の潤い不足を解消する水溶性の「リューブゼリー」」薬局、ドラッグストア、ネットなどで買える (撮影/大野洋介)
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 最近の熟年夫婦は“セックスレス”だと聞く。50歳前後となれば、子育てを終えた一方で、体の機能が衰え始め、夫婦関係が変化してくる。でも、「性」は根本的な欲求のはず。二人きりになるときこそ、関係を築き直すチャンスだ。性にどう向き合うべきか、専門家と考えた。

 変化が生まれる一つの節目は、50歳前後だろう。子育てが落ち着き、夫婦の時間が増える。会社では管理職などとして仕事の責任が増し、親の介護など新たな問題も抱える。何よりも体の衰えを感じ始める。

「女性は50歳前後に閉経して性交痛が生じやすく、セックスレスの一因になる」

 日本性科学会セクシュアリティ研究会代表で、臨床心理士の荒木乳根子さんはこう話す。荒木さんらは今秋、『セックスレス時代の中高年「性」白書』(harunosora)を出版した。性に対する意識を2000年と12年で比較調査した内容で、中高年の実態が生々しくわかる。

 例えば、男性はどの年代も「相手の欲求が自分より乏しすぎる」と考える人が多く、女性は「相手の欲求が自分より強すぎる」と思う人が多い。男性の半数以上が妻とセックスしたいと思いながら、できていない。

 荒木さんは「10年余りでセックスレス化が大きく進んだ」と指摘する。40~50代でみると、男性は2.5倍、女性は1.8倍に。夫婦の別寝も、00年の2割から6割に増えた。

“レス”は、働く女性が増えるなど社会的環境の変化が一因と考えられる。疲れて帰宅すると、明朝のことを考え、“する”気にならない。求める夫に、妻がノーを突きつける。“お勤め”意識が薄らいだのだろう。

 もちろん、原因は疲れだけではないはずだ。荒木さんは、こうも分析する。

「ノーの背景には、女性がセックスをよいものと感じていなかったことがある。女性が楽しいなら、出産の年齢を過ぎてから、“お勤め”終了とならないはず」

『白書』では、“レス”の増加の一方で、異性にひかれる思いや離婚願望が増えていることなど、さまざまな意識の変化を伝えている。

「性交は従来、結婚の中でのみ認められていましたが、今は規範が崩れました。ネットで異性と出会う機会も増えています」(荒木さん)

 セックスを求める中高年が抱く切実な悩みは、体の衰え。男性の場合、勃起障害(ED)だろう。

 日本性機能学会前理事長の丸茂健氏(まるも腎・泌尿器科クリニック院長)は、20~70代の約1500人を調査したことがある。EDの自覚は40代まで1割以下で、50代2割、60代4割、70代6割と跳ね上がる。

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