
ネット上でいくつかの質問に答えると、ロボットが最適な資産配分と運用を実行してくれる。そんなサービスを、ベンチャー企業、ネット証券、メガバンクなどが続々と始めている。IT(情報技術)と金融を融合したフィンテックの一つで、「ロボアドバイザー投資」と呼ばれている。
ロボアドバイザー投資の利点として、ファイナンシャルプランナーのカン・チュンド氏が指摘するのは「リバランス」。相場変動でポートフォリオ(投資資産の組み合わせや割合)が大きく変わった際に、自動的に元へ戻す機能だ。
たとえば、株と債券が半々のポートフォリオで、株が値上がりして債券が値下がりした場合、半々にしていた割合が大きく変わる。
この場合、株を売って債券を買ったり、株をそのままに債券を買い足したりして半々に戻す。結果的に、高値の株を売って利益確定したり、値下がりした債券を安値で仕込んだりできる。定期的に行うと運用成績向上につながるとされる。
「簡単な作業にみえますが、実行するのは中・上級者でも難しい。上昇した資産は『もっと上がるのでは』と欲が出て売れないし、下がった資産は怖くて買えない。こうした感情を排し、自動でリバランスするのは大きなメリットです」
カン氏は、投資家と運用機関の利益が相反しない点にも注目しているという。
「投信や株の売買手数料が金融機関の収益源となる場合、頻繁に売買するほど儲かるが、投資家の資金は減ることが多い。一方で、ロボアドバイザー投資は、投資家の資産の一定割合が金融機関の収益源。顧客の資産を増やすことが、最大のインセンティブになる」
「おまかせ」だけに、投資の知識がまったくない人も、お金を預けるだけで手軽に国際分散投資ができる。ただ、メリットにもみえるこの点は落とし穴にもなる、とトムソン・ロイター・マーケッツの渡邊竜士氏は指摘する。
「当然ですが、預貯金と違って運用成績はマイナスとなる可能性があり、最低限のリスクを理解する必要があります。同じポートフォリオで運用した場合の過去の成績を参照できますが、同じ成績が続くとは限らない」
また、現状の簡単なヒアリング項目にも、限界があると指摘する。