宮城県の高橋内科乳腺クリニックは、胃の内視鏡検査、マンモグラフィ、超音波検査などを実施している。胃の内視鏡は年間約400人が受け、胃や食道にがんが見つかるのは1~2人。視触診とマンモグラフィ、超音波を組み合わせた乳がん検診は月150~200件で、2~3件見つかる。

 同クリニックの高橋喜徳医師(50代)は約10年前から、胃の内視鏡検査を年1回、大腸の内視鏡検査を5年に1回受診する。昨年からPET検査(がんに反応する特殊な薬剤を体内に注入し、たまった様子を撮影する検査)も始めた。今後は3年に1回受ける予定だ。腹部超音波で肝臓などもチェックしている。

「父が胃がんと大腸がんを患いました。胃がんは早期発見でしたが、大腸がんが進行した状態で見つかりました。私自身も消化器内科が専門で、検診の重要性を感じています」(高橋医師)

 一方で、対策型検診の胃のX線や大腸の便潜血の検査について、「有効性を信じていない」とも話す。

「もちろん、受けないよりは受けたほうがよいと思います。ですが、対策型検診は国の医療費を減らすことが目的。個人でがん予防をめざすなら、すべて自費にはなりますが、人間ドックなどの任意型検診を勧めます。具体的には、内視鏡検査を受けてほしい」

 誤解しやすいのは、X線検査や便潜血検査などを受け、「陰性なので安心」との考え方だ。対策型検診は一度に大量の画像や検査データを扱い、見落としがありうる。検診で疑いが出ても実際はがんでない「擬陽性」や、検査で見落とされる「偽陰性」もある。後者だと「毎年受けたのに」と落胆は計り知れないだろう。

 がん検診を「受けていない」と答えた医師も半数ほどいた。最も多かった理由は「面倒」「時間がない」などで100件近かった。

週刊朝日 2016年9月2日号より抜粋