吉田沙保里 (c)朝日新聞社
吉田沙保里 (c)朝日新聞社
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 伊調馨(32)、登坂絵莉(22)、土性沙羅(21)、川井梨紗子(21)が金メダルを獲得したリオデジャネイロ五輪女子レスリング。惜しくも吉田沙保里(33)は涙の銀メダルとなったが、その陰にダルビッシュの存在があるという。

 試合終了の瞬間、吉田沙保里はマットの上で突っ伏して泣いた。

 リオデジャネイロ五輪のレスリング女子53キロ級決勝。五輪4連覇が期待された吉田だったが、アメリカの伏兵ヘレン・マルーリスに敗れ、銀メダルに終わった。

 危なげない試合運びで決勝まで駒を進めた吉田の決勝の相手は、過去2戦2勝のマルーリス。吉田の最大のライバルと目されていたソフィア・マットソン(スウェーデン)を、準決勝で破った選手だった。マットソンとの対戦を想定していた吉田にすれば、これが一つ誤算だったのかもしれない。

 加えて、五輪と世界選手権を合わせ、ここまで16大会連続で頂点に立ち、“霊長類最強女子”と呼ばれる吉田。だが、すでに33歳となり、最近の戦いぶりからはかつてほどの強さが感じられないとたびたび指摘されていた。五輪出場が内定した昨年9月の世界選手権以降は国際試合からも遠ざかった。「それは敗戦の恐怖におびえているから」。そんな臆測も出るほどだった。

 第1ピリオドに1点を先取した吉田だが、第2ピリオドの序盤に一瞬の隙を突かれタックルを許すと、さらに残り1分のところで場外に出され1‐4と差を広げられ、懸命の反撃も及ばなかった。

「点差が開いてしまい……。負けていたので、タックルで飛び込まないといけなかったのですが、ガードが固かった。最後は気持ちで負けてしまいました。力不足です」

 残念だが、涙ながらに敗因について語る吉田の姿からは、すでに女王のオーラは消えていた。

 24歳のマルーリスは「サオリと対戦するのは長年の夢でしたし、本当に光栄なこと」と喜んだが、打倒吉田とばかりに頭を低く下げて両手を突っ張る「吉田対策」を徹底。吉田の持ち味のタックルを完全に封じてきた。

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