「知事選で勝利するには、知名度が欠かせません。その点、タレントや作家などの著名人であれば、政党にとって選挙で投入する労力が少なくすむ。人口規模が大きい地域であるほど、党が推薦しやすいという実情があります。一方、タレント知事は地方での政治基盤が弱く、議会や役所、地元企業などの圧力に弱い面もある。ある県庁の幹部は、タレント知事について『地方行政について何も知らないから、かえって扱いやすいですよ』と話していました。民意を背景に知事になっても、知名度だけでは大きな仕事はできません」

 アンケートでは、知事に必要な資質や能力には何が求められているかもたずねた。すると、「決断力・行動力」が61.6%でトップ。「政策立案能力」(17.6%)や「発信力・説明力」(10.4%)、舛添問題で注目された「クリーンさ」(7.0%)を大きく上回った。

 議会や役所と対立し、激しい批判を受けながらも「大阪都構想」を掲げた橋下氏、「ディーゼル車の規制強化」などを実現した石原氏に支持が集まったのは、知名度だけではなく、高い行動力が評価されたものと思われる。

 また、現職知事では辺野古新基地建設に反対する翁長雄志沖縄県知事、橋下氏とともに大阪都構想を推進する松井一郎大阪府知事が上位に入った。いずれも戦う姿勢を明確にしている知事だ。

 アンケートから読み取れる、知事に必要な“本当の資質”とは何か。浅川氏は言う。

「改革をしようとすれば、既得権益を持つ地元議員や役所と衝突します。そこで知事は、一定の妥協をしながらも、知事が目指す方向に地域を導く政治力が必要となります。1979年から95年まで都知事を務めた鈴木俊一氏は、反発を受けながらも福祉の大幅削減や都職員の給与引き下げを実現し、東京都の財政再建を軌道に乗せました。知名度は低くても、並外れた行政手腕を持っていたといえます」

 日本全国が一律で成長していた時代は終わった。今では地方の独自戦略による地域活性化が求められている。知名度のあるなしに関係なく、未来へのビジョンを示し、実現できる知事が今こそ求められている。

週刊朝日 2016年8月12日号より抜粋

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