「音楽は撮影開始前に作曲され、レコーディングされています。全曲が映像が生まれる前に作られているのです。監督は作品のストーリーを聞かせると、私に音符で語ってくれと言うのです。映像がない段階で音楽を作るということは、映像が語ることを、音楽で重複して語ることがない」

ルルーシュからは「2週間くらいで、このストーリーを語る音楽を作ってくれ」と頼まれるのだそうだ。

「監督は音楽を役者の一人と考え、エモーショナルであることを音楽に期待する。音楽を撮影現場で流すと、歩き方など無意識に役者たちは反応するのです」(レイ)

 ルルーシュはこう話す。

「シナリオは知性に語りかけますが、音楽は心に語りかけるのです。知性と心が期待するもの、願うものはそれぞれまるで違いますよね。音楽のおかげで、人間を成り立たせられる」

 感性の共振を、互いに実感している。ルルーシュは「私たちの感性はお互いとても近いのです。うまい具合に補完し合っているんです」。レイは「かけがえのない盟友です。監督自身、しばしば『僕らの結婚生活はまだまだ続く』と口にしますが、私たちは映画業界で最も長い『カップル』ではないでしょうか」。

週刊朝日  2016年8月5日号より抜粋