俳優の生瀬勝久さんは自分で料理をするときは、何よりも“適温”を大事にしている。
「おいしいものが好きなんですけど、料理のおいしさを左右するのは、素材とか味付け以上に、“温度”だと僕は思う。熱々のスープだったり、キーンと冷えた麺だったり、自然界には存在しない熱さのものを食べるって、人間だけに許された特権であり、贅沢ですよね。僕が料理をするときも、必ず、“適温”で食べられる段取りを考えてから作ります」
この夏スタートしたドラマ「侠飯~おとこめし~」で、料理上手なヤクザの組長を演じている。深夜に食欲を刺激するグルメドラマは、“夜食テロ”とも呼ばれるが、今回の主人公は、「ヤクザ稼業はいつ死ぬかわからない。だから一回一回の食事を大切にする」というポリシーを持つ。
「実は、ヤクザを演じるのは、これが初めてです。僕は、役者を続ける上での明確な夢も野望もないものの、安定するのだけはどうしても嫌なんです(苦笑)。だから、今までやったことのない、意外な役をいただけたことが、まず嬉しかった」
学生のときに芝居に出会って、世の中にはこんなに面白い表現活動があるのか、と驚いた。
「でも、当時はまさか俳優が生業になるとは思っていなかったんです。それが、続けていくうちに、思惑通りにできなかったり、逆に、思った以上の反応があったり。評価の定まらない感じが性に合っていたんでしょうね。“このまま俳優を続けていきたい”と強く思うようになった」