芝居をすることがシンプルに好き。インタビューなどで、役者の仕事について訊かれるたび、自分の考えが整理されていき、今は、「好きなことを仕事にできて、さらに対価までもらえる。これ以上健全なことはない」と感じている。だから、舞台で長いセリフを覚えることも、太らないように常に身体を鍛えることも、基本的にはノーストレスなのだとか。

「大変なことがあっても、終わってしまえば忘れているし、劇評を読んで傷ついても、最終的には褒められたことしか覚えていない。いい性格なんです(笑)。将来への不安も、ないですね。表情筋や瞬発力は衰えてきているし、セリフ覚えも遅くなってますよ。でも、先輩を見ていると、思い出し思い出しの芝居が味になったりしているので、僕もいつか、ああいう味わい深い芝居ができるようになるのかな、なんて考えると楽しい。今は食べるのに困ることもないし、周りの人も優しくて、仕事に集中できますし」

 芝居場は遊び場感覚だという生瀬さんが、ひとつ、俳優として自負していることがある。それは、自分は現場で必要とされる“職業俳優”であるということだ。

「だから僕、今までに芝居で賞をもらったことがない。でももしいつか賞をいただけるときがきたら、そのときは辞退するかも(笑)」

週刊朝日  2016年8月5日号

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