安倍首相は「新しい判断」として消費増税を2019年の10月まで延期することを発表した。
GDP(国内総生産)のおよそ6割の家計消費に冷や水を浴びせた2014年春の消費増税。「黒田バズーカ」だのと騒いだわりに、消費は一向に上向く気配がない。参院選を横目でにらみつつの決断とはいえ、消費税10%の先送りは歓迎の声も多いようだ。第一生命経済研究所の首席エコノミスト永濱利廣氏は言う。
「消費増税をやるべきではないとは思いません。ただ経済の現状をみると、今はそのタイミングでない。日本はずっと同じ過ちを繰り返してきた。金融政策で刺激して、景気が上向くとみるや増税に踏み切る。これではアクセルとブレーキを一緒に踏むのも同然。今は財政出動して弱り切った需要を本来の実力(潜在成長率)に見合うところまで引き上げることが最も重要なんです」
増税延期をめぐり、インチキ資料などで紛糾した顛末にはこんな意見もある。
「安倍さんの本心は、『せっかくアベノミクスがイイ感じだったのに、財務省の理屈に騙されて14年に消費増税し、シナリオが狂った。もう財務省の言うことは信用ならん』ですよ。秘密裏に経産省とサミットの資料作りをした理由もそこ」(あるエコノミスト)
今回は「折れた」財務省だが、そそくさと引き下がるとも思えない。20年度までに基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化、つまり新たな借金(国債発行)をせずに税収だけで支出をまかなう目標は堅持したまま。消費税10%で見込む増収は年5兆円。社会保障費の財源とあって、どう手当てするかも注目される。シグマ・キャピタルのチーフエコノミスト、田代秀敏氏は財務官僚の狙いをこう予想する。
「代替財源はあると判断したから再延期したんでしょう。気付かぬような、気付くのに時間がかかるようなやり方で確保するはず」
田代氏は財務省のターゲットはいくつかあるとみる。