ホームページには女性たちの明るい笑顔が並ぶ。「全日本ママ起業連合会」(東京都北区)、通称ママレン。顧問は「女性が輝く社会」に賛同する参院議員だ。しかし、その団体の実態を知ると、輝きは一気に陰りを見せる。働く女性たちの陰に隠れ、怪しげなX氏(47)が暗躍し、金銭トラブルが続発していた。
X氏とは一体どんな人物なのか。関係者への取材で共通するのは、「企業経営者に近づき、巧みな話術で儲け話を持ち掛けて大金を引き出す才能に長(た)けている」という人物像だ。
大阪府出身。パンや菓子の原材料を製造する父親の会社の代表取締役を務めていたことがある。この時の経験で、食品アレルギーやアトピーについて知識を得たとされる。現在、アトピーケアを事業の柱とする合同会社「アトピック」の代表社員が、確認できる正式な肩書だ。
X氏はママレン設立以前から、数々の金銭トラブルを起こしている。
13年末にX氏は、アトピー性皮膚炎などに悩む人のための料理教室「アトピックケアサロン」を経営していた甲斐輝美さんに接近、料理教室の動画配信などで多忙をきわめていた甲斐さんから、サロンの業務委託を受けることに成功。この時、X氏は「アトピック」を設立した。当時、サロンの受講生だった北海道在住のCさん(40代)は、ここでトラブルに巻き込まれた。
Cさんは、初級コースは甲斐さんのサロンで受講したが、中級コースからX氏が教える講座に変わった。スキンケアのためのビューティーコースも加わり、Cさんは両方で約70万円をX氏に支払った。講座で使う化粧水や乳液は、アトピックで“製造”。原材料をネットショッピングで取り寄せ、調合していたのが、現ママレン専務理事の女性、О氏だったという。
化粧水は3200円、乳液2700円。100円ショップの小さなポリ容器に詰めて、アトピー性皮膚炎患者にもアトピックが販売した。容量が少なくくり返し購入するので、顧客1人当たりの費用はすぐ数万円になる。X氏は「すごい売り上げなんだよねー」と上機嫌だったという。Cさんが「薬事法は大丈夫ですか?」と質(ただ)すと、
「そう、大事なことだよね。申請すれば、すぐに許可が下りるから大丈夫だよ」
神妙な顔でX氏は答えたという。