「でも、自宅に届いた商品が、化学反応を起こして分離していたことがありました。私はアトピックに化粧品の製造番号を問い合わせたところ、信じられない回答が返ってきました。『化粧品ではなく雑貨扱い』だと。そんなことは初めて聞きました。また、X氏が講座で使ったテキストは、Oさんが図書館で600冊の専門書を読破して書き上げたことになっていた。ところがネットで調べてみると、ほとんどコピペであることが判明したのです」
X氏の自宅アパートは東京都中野区の閑静な住宅街にある。自宅から出てきて、白いベンツのドアに手を掛けたところを直撃した。
X氏は被害者の話を全面的に否定した。だが、長時間話をするうちに、しだいに辻褄が合わなくなった。
――書面で契約書を交わさないのはまちがっている。
「そうですね。不徳の致すところです」
ソニー生命保険と約定を交わしたことの真偽について質すと、「協業申請をした」と言い換えた。ソニー生命保険本社との間で契約したのではなく、「ソニー生命のYさんとした」と主張を変えた。
――参加者を信用させるため、約定を交わしたと言ったのはウソですね。
「言葉の不徳の致すところです」
最後は、疲労した表情を浮かべ「オーバートークでした」と言って、自宅へ戻っていった。
X氏に直撃した翌日、元アトピックケアサロンの甲斐さんがX氏を相手取って起こした1600万円の損害賠償請求訴訟の第1回口頭弁論があった。X氏は代理人も立てず、欠席。即日結審し、事実上、甲斐さんの勝訴が決まった。甲斐さんは話す。