コロナ禍の別れは、人々の孤独の意識をより深めることになった。だが、人を弔う気持ちはより強まり、宗教がその支えになる
コロナ禍の別れは、人々の孤独の意識をより深めることになった。だが、人を弔う気持ちはより強まり、宗教がその支えになる

■寺や神社の消滅は地方の消滅につながる

「いま全国にお寺は7万7千カ寺あり、そのうち住職がいない空き寺は1万5千から1万7千ほど。このまま何も対策をしなければ、2040年には空き寺はさらに1万ぐらい増えると見ています」

 と話すのは、ジャーナリストで浄土宗「正覚寺(しょうかくじ)」(京都市)の住職でもある鵜飼秀徳(ひでのり)さん(48)だ。

 鵜飼さんによれば、空き寺が増える要因の一つに、コロナ禍で弔いの形に大きな変化が起きたことがあるという。地縁・血縁が希薄になった都会ではコロナ禍前から葬儀の簡素化が進み、身内だけで行う「家族葬」、火葬だけの「直葬」、枕経・通夜・葬儀をまとめて行う「一日葬」を選ぶ人が増えていた。そこをコロナが襲った。

 特に一日葬は、コロナ禍前には地方ではほとんど行われていなかったが、「3密」を避けるため地方にも広がった。それまで数日かけていた葬儀が1日で終わる。葬儀が短縮すれば当然、寺の収入は減る。

 鵜飼さんが代表を務める一般社団法人「良いお寺研究会」の調べでは、コロナ禍前、仏教界全体の総収入は約5700億円だったが、コロナが蔓延した20年には約2700億円と約47%に減少した。翌21年も3千億~3500億円程度(推計値)にしか回復していないという。経営の悪化は、後継者の問題に直結する。浄土真宗本願寺派で30%(21年)、浄土宗で46%(19年)、曹洞宗で36%(05年)に後継者がいないというデータがある。

「後継者がいなくなった寺は、空き寺となり、地域の同じ宗派に属する住職が兼務していくことになります。しかし、寺の維持・管理には多額の資金が必要で、多額の負債を背負うことになる。コロナ禍が長引けばさらに経済的に困窮する寺院が増え、寺院消滅のスピードを、より加速させる可能性があります」(鵜飼さん)

 神社も同じ悩みを抱える。

 文化庁によれば、全国に神社は約8万社。宮司などの神職は約2万1千人とされ、1人で50社近く兼務する宮司もいる。神社本庁が15年に約6千の神社に行ったアンケートによれば、年間の収入が300万円未満と答えた神社は約6割に上った。後継者不足と氏子の減少で、存続が難しい神社は少なくないと見られている。

 鵜飼さんは、お寺や神社の消滅は地方の消滅につながると警鐘を鳴らす。

「特に地方の観光資源を考えた時、多くはお寺や神社といった宗教施設です。その宗教施設がなくなるということは、その地域を訪れる理由がなくなり、さらに地方は衰退していきます。幼稚園とか保育園を経営している宗教施設も多く、子どもの受け皿がなくなるので、地方から人はどんどん減っていきます。そして、日本人の心のよりどころである場もなくなっていきます」

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