■家族全体のために
秋田県湯沢市では、ふるさと納税の返礼品に「家事代行」がある。遠方で暮らす高齢の親のための利用を想定しているという。冒頭の和田代表によると、福利厚生のひとつに取り入れる企業も増えているという。
大手の参入も目立つ。昨年9月に神奈川県でスタートした「Yohanaメンバーシップ」。パナソニックの子会社が運営し、米アップルやグーグルの副社長を歴任した松岡陽子さん(51)が代表を務めている。その最大の特徴は「多様な家庭のニーズに寄りそう」というスタンスだ。
「雨の週末に子どもを連れていける室内の遊び場を調べる」
「クリスマスパーティーで、子どもたちが喜ぶ飾り付けをする」
「友人へのプレゼントを選んで、発送する」
いずれも仕事や家事の後回しにしがちで、場合によっては手をつけずにやり過ごすこともできてしまうことばかりだが、専門家が下調べをして提案してくれたり、必要な業者を手配してくれたりするという。
費用は月1万8千円でけっして安くはない。だが、同社が21年から先行して事業展開している米シアトルでは月249ドル(約3万2千円)ながらも1千世帯以上が利用しているという。双子を含む4人の子どもがいる松岡さんは、
「慌ただしい生活の中で最初にギブアップしてきた分野が達成できると満足度が高い。家族全体のウェルビーイング(心身の健康と幸福)を上げていくためにも必要なサービスであり、ニーズはあると思います」
家事代行の一歩先へ。業界の進化は止まりそうにない。(編集部・古田真梨子)
※AERA 2023年2月20日号