日本人の2人に1人が発症し、3人に1人が亡くなるという“がん”。寿命を大きく左右するこの病気について、昨年、国立がん研究センターが、都道府県の状況を示すデータを二つ発表した。
がんになりにくい県は神奈川で、なりやすい県は秋田、5年後の治療成績がよいのは東京……。これらは、国立がん研究センターが公表した「全国がん罹患モニタリング集計(※1)」や「がん診療連携拠点病院院内がん登録 5年相対生存率集計(※2)」でわかったことだ。
モニタリング調査を担当したがん対策情報センターがん登録センター全国がん登録室の松田智大さんによると、「がんの種類と地域性の関係も、ある程度見えてきた」という。
「胃がんは日本海側の地域(秋田、山形、新潟、石川、鳥取、島根など)で、肝臓がんは山梨と西日本(兵庫、島根、高知、大分など)で、肺がんは北海道と西日本(京都、奈良など)で罹患率が高い傾向があった」
この結果から松田さんが注目した県は、長野と広島だ。いずれもがんの罹患率が高く、死亡率は低い。極端にいえば“がんにかかっても死なない”県だ。
「一般的に、がんは加齢がリスクで、他の病気や事故で亡くならず、長生きするほどかかりやすい。“長寿県”の長野で罹患率が高いのはそのせいかもしれませんが、なぜ死亡率が低いのか。気になります」
ある時点でがんと診断された人が5年後にどれだけ生存しているかを示すのが、“5年相対生存率”。今回は2007年にがん拠点病院でがんと診断された人を調査。胃、大腸、肝臓、肺、乳房の、いわゆる“5大がん”で公表した。
同調査の責任者、がん対策情報センターがん登録センター長の西本寛さんは、「全県、全拠点病院の数字ではないので、完全なデータではない」というが、“がんが進行した状態で見つかる割合が高い地域ほど生存率が低い”など、ある程度の傾向はわかる。
胃がんで最も高かったのは東京、低かったのが群馬。以下、大腸がんは香川/青森、肝臓がんは富山/香川、肺がんは長崎/沖縄、乳がんは長野/青森だった。
「例えば、胃がんは検診での早期発見が可能。一般的には検診受診率などが影響している可能性があります。肝臓がんは西日本に多いという地域性があるので、全国での分析は難しいかもしれません。乳がんは早期発見が可能ですが、青森は進行した状態で見つかる割合が高い。乳がんの早期発見の方策を検討する必要があります」(西本さん)
※1 全国のがん診療施設についてがん罹患や死亡などにかかわる30項目を調査。比較的精度の高いデータが得られた39道府県(約40万件)について検討
※2 全国のがん診療連携拠点病院293施設のうち、精度の高い40都道府県177施設約17万件のデータをもとに作成
※週刊朝日 2016年3月4日号より抜粋