「大丈夫かな。あれ、左が縁石に乗り上げてしまう」
言い訳ばかりだ。何とかバックで車庫に入れた。と思ったら、村田記者が、
「左はギリギリでした。でも大丈夫です」
うるさいなあー。わかってますよー、だ。そこで方向転換を試みて失敗。一度では無理だ。切り返して何とか通過。コースを一周して、次の逆方向の車庫入れ。ここでミスを2回。バックで早くハンドルを切りすぎた。
真っ直ぐに止められない。あわてて方向を変えようとして前の縁石に乗り上げた。実際に使う高齢者講習時のコースでの実車実技だ。教官がチェックリストに書き込むのが見えた。
バツ印だ。大きな減点に違いない。踏切の一時停止は守れた。しかし、左折時に一時停止を見落とした。
「今のところは一時停止です。止まらないとダメですよ」
叱られた。なんとか15分の走行は終わった。車から降りるとメディアの人たちが集まってきて教官の講評を聞く。
「山本さんは最近、運転をされていないということでした。縁石に乗り上げたのが2カ所。一時停止の無視が1回。それと慣れていないのか、カーブを大回りして中央線の近くを走られていたのが気になりました」
「もう走らないほうがいいでしょうか」
免許証返上を決めているのに、未練だろうか。ぼくは自信なさげに聞いた。教官は言った。
「少し走って運転に慣れれば、それほど問題はないと思います。コンディションとかよくみて運転されれば大丈夫ですよ」
この言葉にぼくは少し自信を回復した。
※週刊朝日 2016年2月19日号より抜粋
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「ボケてたまるか!」著者、山本朋史さんが高齢者運転実験に挑戦!
https://youtu.be/SvAMylnwKf8