
本読みのプロたちが選ぶ週刊朝日の恒例企画「歴史・時代小説ベスト10」。7回目の今回は、6年ぶりの小説となった飯嶋和一さんの『狗賓童子の島』が1位に選ばれた。飯嶋氏の受賞インタビューと、気になるランキングをお届けする。
──第1位の感想は?
飯嶋:もう63歳にもなりまして、あまり先は長くないですし(笑)。非常に恐縮してます。
──新作を待ち焦がれていた読者も多かった。
飯嶋:本当にすみません。6年ぶりですかね。
──本作では大塩平八郎の乱が取り上げられています。
飯嶋:ずっと引っかかっていたんですよ。だって、とんでもない話でしょ。自分の家のある天満に、焼夷弾をぶち込んで大坂の5分の1を焼いてしまうんですから。それなのになぜか人気がある。明治に入ってすぐ、さまざまな憲法草案=私擬憲法が民間で作られるのですが、その資料に大塩平八郎の檄文がよく出てくる、という話も聞き、なんで?とも思った。一方で森鴎外の小説「大塩平八郎」などでは決してよくは描かれていない。
──大塩本人ではなく、蜂起に参加した洗心洞同人・西村履三郎の息子・常太郎が主人公です。
飯嶋:大塩平八郎に関しては本も数多く出ていますし、私がわずか数年間勉強させてもらって書くようなものではない。だから興味を持ちつつもフィクションとして書くとっかかりがなかったんですが、あるとき歴史学者の森田康夫先生が西村履三郎の長男・常太郎について書かれたものを読み、この形だったら小説として書けるかもしれないと思ったんです。