米国は社会保障番号制度で大失敗している。06~08年、社会保障番号を使ったなりすまし事件の被害者が1170万人、損害額は3年間で約15兆円に及んだという。
米国の場合は、写真による確認もなかったため「なりすまし」が広がった。
総務省は「厳格に写真での本人確認をするし、芋づる式にさまざまな個人情報が流れ出ないようなしくみになっている」と言うが、個人番号カード作成時点で写真が差し替えられていたら、なりすましは防ぎようがない。他人に悪用されても、認知症高齢者では、本人も周囲もずっと気づかない可能性すらある。
ただでさえ、リスクの高いマイナンバーを認知症高齢者に付与するメリットはあるのだろうか?
「メリットどころか問題のほうが多い」
と、介護・福祉に詳しい外岡潤弁護士は強調する。高齢者がマイナンバーを受け取ったあとにも、問題は続く。12ケタもあるマイナンバーを受け取った高齢者が、紛失しないようにどうやってこれを保管し続け、そして活用していくのか。これが大きな問題としてたちはだかる。前出の司法書士は言う。
「いくら行政手続きが簡素化されるといっても、認知症高齢者がマイナンバーを使うこと自体が無理です。ところが、国も現場も<受け取り対策>までで手いっぱい。誰が高齢者に代わって責任を持ってナンバーを預かるのかということまで思い至っていない」
(本誌取材班)
※週刊朝日 2015年10月16日号より抜粋