今秋は、チェーホフの「桜の園」のロパーヒン役で、2年ぶりに新国立劇場の舞台に立つ。

「東京乾電池でも昔、『桜の園』を上演したことがあったみたいで。そのときの舞台にいろいろ心残りが多いのか、ウチの親父が、『ロパーヒンを演じる際に参考になる映画』とか、稽古の何カ月も前からメールでリストを送ってくるんです。うるさいから、『了解です』って返信して、即削除してますけど(笑)」

 一家揃って“芝居バカ”。芝居の道に進むことは、ある意味自然なことだったとはいえ、高校を卒業して、専業俳優になるときは、とても不安だったそうだ。

「芝居なんて、世の中の動向とまったく関係ないし、映画や演劇がなくたって、人間、生きていけるじゃないですか。そんなことを思うと、役者という仕事が地に足がついていないもののように思えて、どこに力を入れたらいいのかわからなかった。

 でも、あるときぱっと気づいた。“ちゃんと生きよう”って。早寝早起きして、掃除して、洗濯して。普通の生活を基盤に置こう、って。あとは、映画を一年に何百本観るとか、具体的な目標を設定しました。人間力を鍛えることが、演じる上でも一番大事なんじゃないかと思って」

週刊朝日 2015年9月25日号