大切なのは「自分の目や耳、肌で確かめること」(※イメージ)
大切なのは「自分の目や耳、肌で確かめること」(※イメージ)

 再び起きた高齢者施設での虐待に、相次ぐ謎の転落死。民間の参入で乱立する施設と慢性的な人手不足の悪影響は、従来“高額でサービスが手厚い”と思われていた有料老人ホームにまで及んでいる。

 把握が難しい介護現場の闇。組織ぐるみで隠蔽しているケースでは、なおさら表に出にくい。私たちに家族や自分の身を守る術はないのだろうか。

 入居希望者の相談を数多く受けている、有料老人ホーム・介護情報館館長の中村寿美子さんが強調するのは「自分の目や耳、肌で確かめること」の大切さだ。まずは現場の人間からじっくり話を聞き、対応を見て、利用者の様子を観察する。

「見学時の営業マンのトークや、1泊だけの体験入居は施設のPRに過ぎず、真実は見えてこないのです」

 しっかりした施設かどうかは、「具合が悪くなったときの対応」の説明が十分かどうかでも、ある程度はわかるという。

 そのほかにも、「水回りなど共有部分が磨かれて、整理整頓されているか」「施設に入ったときに汚物などの異臭がしないか」をチェックすることで、職員の目が隅々まで行き届き、利用者への対応が十分であるかが推し量れる。

 見学は最低でも2カ所以上を。その際の注意点は、施設側が募集する団体ツアーではなく個別に見学すること。これで“ブラックホーム”回避の確率はぐっと上がるはずだという。

「見学後の施設を比較する際に役立つのが、職員数と常勤職員数、有資格者数、年間退職者や採用者数などを記載している『重要事項説明書』です」(中村寿美子さん)

 有料老人ホームの事業主には、重要事項説明書の作成・届け出が義務付けられており、各自治体のホームページで閲覧できる。東京都の場合、東京都福祉保健局のサイト→分野からのご案内「高齢者」→高齢者施設「有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)」→東京都有料老人ホーム重要事項説明書一覧、の順で見てほしい。ダウンロードや印刷もできる。

 こうして見つけた施設に家族が入居した後も、大切なことがある。

次のページ