ただ13人の中には、野田氏と親しい議員は半分ほどしかいない。付き合いの深い女性参院議員2人は、官邸や支援団体の圧力に折れ、涙を流しながら「力になれなくてすみません」と野田氏に頭を下げた。

 元夫の鶴保庸介・党参院政審会長も二階派の副会長ということもあり、泣く泣く断らざるを得なかった。

 一方の衆院も、当選同期で親友の浜田靖一・衆院平和安全法制特別委員長は「今回は出るべきではない」と、推薦人にならなかった。野田氏を姉と慕う小渕優子前経済産業相は「推薦人になる」と直訴したが、野田氏が断った。「秘書の起訴で党に迷惑をかけている小渕氏が、さらに私の推薦人になれば、みなの反感を買う。彼女の将来が閉ざされてしまう」との“姉妹愛”からだった。

 ではどこから推薦人を集めたのか。野田氏の関係者が重い口を開いた。

「実は接点のない議員から、次々と『推薦人になる』という申し出を頂いた。『安倍首相は堂々と総裁選をやるべきだ』『一石を投じたい』との考えだったようです。最終的に1人ははがされましたが、残りはとどまってくれた。『官邸には野田さんの推薦人になりませんと言っておいたよ』という豪快な人もいました」

 野田陣営にとってはうれしい誤算。だが、本当の誤算もあった。前党参院幹事長の脇雅史参院議員だ。脇氏は尾辻氏と同じく「総裁選はやるべき」との考えで、推薦人にも前向きだった。

 しかし、現在は参院の自民会派を離脱中。離脱者は自民党員であっても、党の規定で推薦人資格がなかった。「総裁選の投票はできるのにおかしい」と野田陣営は党に詰め寄ったが、覆すことはできなかった。

 仮に脇氏を加えれば19人。あと1人で20人達成となれば、同情から協力してくれる人も大勢いただけに、泣くに泣けない党規定だった。

週刊朝日 2015年9月25日号より抜粋