触覚ゲームにチャレンジする記者。箱の中に手を入れて触ったものは…(撮影/写真部・岡田晃奈)
触覚ゲームにチャレンジする記者。箱の中に手を入れて触ったものは…(撮影/写真部・岡田晃奈)
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 触覚や味覚など人間の五感の衰えが記憶障害に微妙に関係しているという。認知症早期治療実体験ルポ「ボケてたまるか!」の筆者・山本朋史記者(63)が通っているデイケアでは朝田隆医師らの提案で五感を磨く訓練も取り入れられている。そこで記者も挑戦してみた。

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 6月には指の感覚を研ぎ澄ませて箱の中に何が入っているかを当てる触覚ゲームもやった。事前にスタッフの作業療法士、佐藤夕香さんが、こう言っていたずらっぽく笑った。

「さっき気持ち悪いものを触って、ずっと胸がムカムカしてます」

 さぞかし変なものが出てくるのだろうなあ。箱には左右に穴が開いている。両手が入るほどの大きさだ。前の部分には大きな窓が。回答者には見えないが、ギャラリーには中が見えるつくりだ。

 最初にKさんが挑戦した。Kさんは後ろ向きに座った。品物が箱に入れられると、Kさんは箱に両手を入れた。窪(くぼ)みとヘタを触ってわかったらしい。2秒で「ミカン」と答えた。

 次は女性で、糸こんにゃくが皿の上にのって登場した。司会進行役の精神保健福祉士、野村聖子さんが、「念のため、お手拭きのウェットティッシュを置いておきます」。

 観客席は、「生き物で動き回るよ」「ぬれていて気持ち悪い」と騒ぎ立てるが、女性は動じない。糸こんにゃくを右手で強く掴んでもみ、「ラーメンでもないし、糸こんにゃくだわ」。

 これも数秒で即答、正解。続いてぼく。後ろ向きに座ると、野村さんが聞く。

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