高齢者の世代はほかの世代と比較して、総じて金持ちだ。総務省によると、60歳以上世帯は平均貯蓄額が2千万円を超えて、全世帯の貯蓄総額の6割以上を占めている。
国はそこに目をつけた。
14年に衆議院を解散したとき、安倍晋三首相は「消費税の引き上げは先延ばしするけれど、20年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)黒字化の目標は捨てない」と語った。
6月末に公表された「骨太の方針」の素案をよく読むと、具体的な削減目標などは一切書かれていない。しかし、
「20年度のPB黒字化が、自民党の財政再建特命委員長・稲田朋美政調会長に課せられた宿題なのです。そして、自民党の行政改革推進本部で、何をカットしたら数字が達成できるのか検討し、特命委に報告している」(同)
その特命委の最終報告では、楽観的な経済前提での試算でも、20年度にPBは9.4兆円の赤字が残るため、「経済成長だけではPB黒字化のメドがたたないことは明らか」とし、歳出カットの具体的なプランを示した。
中身を見ると、「後期高齢者の医療費窓口負担のあり方見直し」「高所得高齢者の基礎年金の一部縮減・停止」などと、高齢者をターゲットにした項目が並ぶ。まさに“高齢者いじめ”だ。今国会で閣議決定される「骨太の方針」には特命委の具体的な削減案は反映されていないから安心、などと言ってはいられない。