安倍晋三首相が4月の米議会演説で「夏までに成就させる」と宣言し、今月中にも強行採決される可能性の高い安保法制。しかし、中国と米国の軍事的緊張が高まり、南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島での有事=戦争が懸念されている今、そこに日本が加わることになるかもしれない。いま最悪のシナリオを考えてみた。
南シナ海のシーレーン(海上交通路)は、世界の貿易の半分以上の貨物が通過すると言われている。そこには、中東の石油やガスなどのエネルギー資源も含まれる。ただ、南シナ海で軍事衝突が発生したとしても、スマトラ島やジャワ島の南側を通る迂回(うかい)路があるので、日本への影響は少ない。新しい安保法制でも、南シナ海は自衛隊の活動範囲外と考えられていた。
それが、28日の衆院特別委員会で注目の発言があった。維新の党の江田憲司衆院議員が「(自衛隊の新しい活動範囲は)マラッカ海峡か、南シナ海か、インド洋か」と問うと、安倍首相は「具体的に法律の対象にするかは言及を控える」としながらも、「南シナ海で、ある国が埋め立てをしている」と答弁したのだ。
安倍首相が中国への警戒心を見せた瞬間だ。元外交官の孫崎享氏は言う。
「オバマ政権は軍事行動に抑制的でしたが、共和党の候補者はもちろん民主党のヒラリー・クリントン氏が次の大統領になっても、自衛隊を南シナ海に出せという要請はより強まるはずです。従来の自衛隊の活動範囲は『周辺事態』という言葉で極東に限られ、具体的には台湾くらいまでと考えるのが常識だった。新しい安保法制によって、日本が戦争に巻き込まれるリスクはより高まるでしょう」
自衛隊の艦船が、南シナ海での戦闘に巻き込まれる可能性はあるのか。