山梨県の勝沼地方で作られる甲州ブドウは、日本固有の品種だ。由来は、コーカサス地方原産のブドウ。シルクロードを経て、奈良から平安時代の間に日本へ伝わったと言われる。日本最初のワインも、このブドウを使って造られた。
丸藤葡萄酒工業の代表取締役社長の大村春夫さんは、日本のワイン発祥の地である勝沼で40年以上も、甲州ワインを造る。
「気候が適したのか、甲府盆地で千年近く育った、ただ一つのブドウです。秋になると熟した実が淡い藤色に染まる」
たたずまいのとおり、味わいも優しい。もう少し厚みやうまみを出そうと大村さんが選んだのが、シュール・リーという醸造法だ。フランス語で「澱の上」を意味する。澱と一緒に数カ月間おくことで、澱が分解した成分がワインに溶け込み、味わいは深く複雑になる。そうしてできたのが、「ルバイヤート甲州シュール・リー」だ。
楚々としながらも芯は強い。そんな日本女性のようなワインを目指したという。
(監修・文/鹿取みゆき)
※週刊朝日 2015年6月5日号