このアルバムは知っている人は知っている。ハードバップの味わいを求め、サイドマンの顔ぶれから見当をつけてアルバムを渉猟しているマニアなら、おのずとサウンドが見えてくるはずだ。ただ、リーダーのピアニスト、ジョージ・ウォリントンは今となっては滅多に話題に登らないので、そちらからのアプローチだと、意外と盲点となっているのではなかろうか。
聴き所は言うまでも無く、ドナルド・バードとフィル・ウッズの2管フロントだ。彼らもウォリントンによって集められたのだから、リーダーを無視するのはあんまりかもしれないけれど、私にはウォリントンならではのバンド・サウンドというものがよくわからない。ブルーノートやプレスティッジに良くある典型的ハードバップなのだ。
確かに白人ながらバップ・ピアニストに数えられ、早い時期にハードバップの名盤として知られるプログレッシヴ原盤の『ジョージ・ウォリントン・クインテット・アット・ザ・ボヘミア』を吹き込んだ功績はあるにしても、やはりあのアルバムもドナルド・バードとジャッキー・マクリーンがいればこそなのではなかろうか。
まぁ、考えようによれば、バード、マクリーン、あるいは、バード、ウッズという魅力的な連中を起用し、余計なタガをはめずに彼らのオイシイところをうまく引き出しているという見方も出来るわけで、そういう意味で言えば名伯楽なのだろう。
それはさておき、このアルバムはアルトがマクリーンからウッズに変わったウォリントンのニュー・クインテットで、これもマニアはご存知『ジャズ・フォー・ザ・キャリッジ・トレード』(Prestige)とメンバーはほぼ同じ。冒頭飛び出す《イン・シャラー》が実にカッコいい。ハードバップ・マニアなら黙って買いだろう。白人ながらアーシーなピアノで知られたモーズ・アリソンの名曲だ。使い古されたせりふだが、まさに「1曲買い」と言いたくなる。
しかし続く《アップ・トヒコン・クリーク》から《グラデュエーション・デイ》の流れも気持ちよく、「この1曲だけ」ということはまったくない。とにかくハードバップが好きなら買ってソンは無いはずだ。
【収録曲一覧】
1. In Salah
2. p Tohickon Creek
3. Graduation Day
4. Indian Summer
5. 'Dis Mornin'
6. Sol's Ollie
George Wallington (p)
Donald Byrd (tp)
Phil Woods (as)
Teddy Kotick (b)
Nick Stabulas (ds)
1957年3月1日録音