先月の訪米演説で株を上げた安倍晋三首相。しかし、作家の室井佑月氏は、その称賛がアメリカ本位であることに怒りを露わにした。
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4月29日に安倍首相が米連邦議会で行った演説を、メディアでは「100点満点の大成功」みたいに取り上げていたが、あたしにはアメリカに対する熱烈なラブコールにしか見えなかった。
改めて新聞に載っていた演説の全文を読んでみたが、やっぱりこっ恥ずかしいほどの熱烈なラブコールにしか見えない。
あたしは専門家ではないから、安倍さんの演説の価値はわからない。
ただ、唯一わかったことは、この国の100点満点とされる外交とは、アメリカへの熱烈なラブコールってことなんだ、ってこと。
メディアに登場する評論家たちもこぞって安倍さんのラブコール演説を誉めそやしたってことは、この国の知識人たちもおなじ考えである人が多いのか。
だとすると、この国の様々な問題に、我々の思う解決などない。
政府は、沖縄の基地移設問題や、TPPの交渉、集団的自衛権の行使容認など、多くの国民の意見にまったく耳を貸さない。
これからのことについて政府は、
「丁寧に説明していく」
あたしは今回の安倍さんの演説と、その後の報道を見ていてふと思った。
政府がほんとうに丁寧に説明すべき相手は、我々じゃなく、アメリカなんじゃないかと。この国の立場や、この国としてどうしたいかを、こんこんと話し合わなきゃならない相手はアメリカじゃないの?
この国の政府の人間には、我々の代表として、我々の利益をぶんどってきて欲しい。そこが腕の見せ所じゃんと思うが、そうではないらしい。
米連邦議会での演説が、どれだけ安倍さん自身の評価につながったかなんて、我々には関係ない。
でも、帰国後、アメリカから約3600億円でオスプレイを17機買うということは、関係ある。
税金を払っているからだ。
5月9日付の日刊ゲンダイに、安倍さんが米連邦議会で演説を行った代償に、米国でも世界でもお荷物扱いのオスプレイを、「初の輸出先」と浮かれて、高値で押し付けられた、と書かれておった。一機30億~50億円が相場(軍事ジャーナリスト談)のものを、一機211億円で買うらしい。ひゃ~。
先輩にカツアゲされる小学生だって、「その額は……。ちょっと酷過ぎるよ」って、それくらいはいうだろう。
ま、安倍さんとその取り巻きには、「演説の代償」という言葉に、「捏造だ」「証拠をあげよ」とか反応する人もいるのだろうね。
じゃ、逆にお聞きしたいけど、安倍さんいわく最高の友達であるところのアメリカは、なぜお友達の懐ばっか狙ってくんの?
※週刊朝日 2015年5月29日号