国にも、日本ワインを世界に向けて売り出したいという思いがあるという。

 日本ワインを愛飲する古川俊治参院議員は、

「安倍政権になってから、官邸は積極的に海外の賓客を日本ワインでもてなしています」
と話す。

 上り調子の日本ワイン界だが、課題もある。

 まず挙げられるのが、ワインに関わる法の整備だ。現在は、原材料の産地や品質の保証についての表示義務を定める法がない。製造側の自主基準に委ねているのが現状だ。

「国産ワイン」とラベルに書いてあれば、多くの人は、日本のブドウで造ったものだと思うだろう。しかし、必ずしもそうでない。

 国税庁の調査によると、「国産ワイン」と表示されたワインのうち、すべて国産のブドウで造ったものは4分の1程度。残りは濃縮果汁など海外原料を使ったものだったという。

 数年前から大手ワインメーカーをはじめ、多くのワイナリーは、国産原料の他に海外原料も含め国内で醸造したものを「国産ワイン」、国産ブドウだけを原料に使ったものを「日本ワイン」と定義して区別している。

 海外の濃縮果汁の使用=品質の悪さではない。海外原料を使えば安定して生産でき、手ごろな価格にもつながる。ニーズがあるのも事実だ。だが、現行法では、濃縮果汁を水で薄めて発酵させ、国内の工場で詰めたものも「日本のワイン」として売り場に並べられることもあり、消費者を混乱させている。

 事実上の「ワイン法」制定を目指す動きもある。古川議員をはじめとする有志議員は、この3月、国税庁に提言をまとめた。「国産のブドウを使ったワインの定義」や原材料の表示について消費者にわかりやすい統一ルールの策定を求めたものだ。

「告示による規制など、今年度中には具体化できるのではないか」(古川議員)

 環境整備も進む日本ワイン。5年後に控えた東京五輪ではきっと、“おもてなし”の酒として、海外のワイン通をうならせているだろう。

週刊朝日 2015年5月1日号より抜粋