サンジェルマンのジャズ・メッセンジャーズ/アート・ブレイキー
サンジェルマンのジャズ・メッセンジャーズ/アート・ブレイキー

 はやいもので、もう連載98回目。バックナンバーには43本しか載ってないけれど、記念すべき100回は、もう目の前である。記事一編を見開き2ページにして、まえがきあとがきを加えたら、なんと一冊の本ができあがってしまうほどの分量なのだ。

 実際に本になるクオリティがあるかどうかはさておき、月2本の連載が、こんなに続くとは思ってなかったので自分でも驚いている…、というか、今思えば、こんなんでよく降ろされなかったものだと、読み返すたびに冷や汗が出る。

 最初の取り決めでは、「月に1本か2本、高音質なCDについてのコラムを書け」ということだった。2本書いても1本でも原稿料は同じ。だから、本当は月1本でもいいのだが、願ってもないチャンスなので、一週おきに月2本、なんなら毎週でも書かせていただくつもりでOKした。

 締め切りは絶対厳守!とは言われなかったけど、穴をあけると担当の小さんが困ると思い、早め早めの入稿を心がけた。一度、あまりにも早く送りすぎたために、「今月分がまだ来てませんよ!」と注意されたこともある。

 わたしは物書きのプロではないけれど、稿料をもらっているからには、必ず締め切りは守らないといけない。逆にいえば、プロでもないくせに締め切りを守らんとは何様のつもりか!?と、そんなふうに思われてはいけないので、必死で頑張った。けれど、どうしても間に合わん!ああ~~~!!神様~~~~!!!ハブメルシ~~~~!!とヘイゼル・スコットのごとく叫んだら、「連休のため今週のジャズストリートは、おやすみさせていただきます」となって救われたりもした。

 いちばん困ったのが題材探しで、毎回CDをピックアップして、それに関する内容を書くことになってるのだが、まったく関係ないことを書いて、最後に強引にCDのタイトルにこじつけるというような、ほとんど詐欺同然の書き方もよくやった。実際に今も、今回は『サンジェルマンのジャズ・メッセンジャーズ』にしようかなと思ってるところだ。

 また、出てくるのが有名盤ばかりというのも、このコーナーの特徴で、見慣れたジャケットの図柄が並んでいると、ジャズファンはなんとなく安心するものだし、知ってるレコードの話なら、ちょっと読んでみようかという気になってくれるかもしれない。本当は内容に関して評論しないから、そういう大それたことができたのだ。

 高音質CDについては、そのように呼ばれるものに対し、大いに疑問ありという姿勢を貫いた。音質を突き詰めれば突き詰めるほど、音楽の内容じたいが再生音に影響を与えているという、オーディオ業界でも、あまり知られてない秘密を持ち込んだ。「高音質CDだから良い音で鳴る」のではなく、「演奏が上手いから良い音で鳴る」のである。

 ジャズは、楽器を良い音で鳴らす名人たちの音楽なのだ。パーカーも、パウエルも、マイルスも、モンクも、素晴らしい音で演奏した。その前提なしに、音質の良し悪しを語っても意味がない。

 なんだか本当に「あとがき」風になってしまったところで紙面が尽きた。やはり今回のお題は『サンジェルマンのジャズ・メッセンジャーズ』。リマスターの輸入盤はジャケットも新装、三枚組みから二枚にシェイプアップされた完全版でお求め安くなっております。演奏は大興奮のお墨付き。音質は、どうぞご自分の耳でお確かめください。

【収録曲一覧】
『Complete Concert at Club Saint Germain』
Disc:1
1. Politely
2. Whisper Not
3. Now’S The Time
4. The First Theme
5. Moanin’ With Hazel
6. We Named It Justice (Evidence)
Disc:2
1. Blues March For Europe-Number One
2. Like Someone In Love
3. Along Came Manon
4. Out Of The Past
5. A Night In Tunisia
6. Ending With The Theme

Lee Morgan (tp),Benny Golson (ts),Bobby Timmons (p),Jimmy Merritt (b),Art Blakey,Kenny Clarke (ds)

[RCA] 21.Dec.1958.at Club St.Germain,Paris. Engineer:Raymond Treillet