そうなるとどんな変化が生まれるかといえば、オフコン全盛の時代にパソコンが生まれたような状況が発生するのである。恐らくモーター、電池、制御コンピュータのメーカーが少数寡占をするような状況になり、完成車メーカーが乱立する。すでに中国などでは電動スクーターがそのような状況になってきている。
そして制御系以外の情報系、カーナビやコントロールパネル、カーオーディオなどは、すでにスマートフォンやタブレットで十分な状況で、実際に消費者は常にネットに接続されているデバイスを求めている。あらかじめ自動車に装着されたカーナビなど、もはや必須ツールではなくなっているのである。
トヨタなどはFCVのような燃料電池車を推進することで新たな参入障壁をつくろうとしているが、明らかに世の中の動きに逆行していることは間違いない。ハイブリッド車にしてもEVへの移行をできるだけずらそうとしている後ろ向きな動きだと思われる。米国のカリフォルニア州で、ハイブリッド車がエコカーの定義から外されたのも当然の結果だろう。
これまでのアップル社の動きを見ると、自動運転車まで見据えてEVに取り組んでいるのだと思う。巷で話題になっている、テスラ・モーターズを買収することだって選択肢の一つだと考えているに違いない。テスラ社のCEOのイーロン・マスクごとアップル社に引き抜いてしまおうという動きもエキサイティングなチャレンジである。
こうしたダイナミックな動きに対抗しようと思ったら、経営資源を自動運転車とEVに集中するしかない。イノベーションのジレンマに陥っている場合ではないのである。
※週刊朝日 2015年4月3日号