日本アルコンから発売中の遠近両用コンタクトレンズ(撮影/加藤夏子)
日本アルコンから発売中の遠近両用コンタクトレンズ(撮影/加藤夏子)
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 一般的に40代から始まる老眼。その年齢から老眼鏡をかけるのに抵抗がある人も少なくないが、コンタクトレンズで解決できるという。

 コンタクトレンズは若い世代が使っているという印象が強いが、実は60歳前後が第1世代になる。そんな年齢層が今注目している老眼対策が「遠近両用コンタクトレンズ」だ。周囲に悟られないのが魅力とされる。1枚のレンズに、【1】中央部分に手元など近くを見る近用ゾーン、その外側に遠くを見る遠用ゾーンのタイプと、逆に【2】中央部分に遠用ゾーン、その外側に近用ゾーンのタイプがある。目から入った情報を判断し、見たいものを選択する脳の機能を利用している。

 眼科領域の専門メーカーの日本アルコンは09年、酸素をよく通す新素材を使った2週間交換の「エア オプティクス アクア遠近両用」を国内で初めて発売。昨年からは1日使い捨ての「デイリーズ アクア コンフォートプラス マルチフォーカル」を扱う。いまや約40種が流通しているとされる。

 都内の男性会社員(51)は3年前から遠近両用コンタクトレンズを使っている。大学時代にハードコンタクトを、社会に出てからは近視用メガネだったが、5年ほど前から老眼を自覚。遠近両用コンタクトレンズを知り、眼科を受診した上でトライアルのレンズに挑戦したところ、手元がメガネよりも見えて装着感もよかった。自分に合ったレンズを処方してもらって以来、毎日使う。医師は「近眼用メガネより遠くははっきりと見えなくなる可能性がある」と言ったが、「生活に支障が出るほどではない。医師の説明もあったので、その点は納得して使っています」。

 遠近両用のメガネはレンズの上の部分で遠くを、下で近くを見るように設計されているため、近くを見るときにはメガネをずらす必要がある。この動作が男性には煩わしそうに感じた。

「遠近両用コンタクトレンズなら意識して視点を変える感覚がなく、近くも遠くもごく自然に見ています」

 男性は老眼が出始めたころ感じていた疲れ目や肩こりも軽減したという。

 遠近両用コンタクトレンズの利用者はまだまだ少数派で、利用の多いソフトコンタクトレンズでも市場のわずか2%。ただ人口減などで市場がマイナス成長になるなか、遠近両用コンタクトレンズはここ2、3年で急速に伸び、14年は対前年比で約17%増に。アルコンの調査(13年)によると、コンタクトレンズユーザーの約4割はすでに40歳以上で、進む高齢化を見据えたメーカーも力を注ぎ、性能も格段に進歩している。だが課題もある。

「単焦点のレンズが1カ所に100%ピントを合わせるのとは違い、1枚のレンズで2カ所にピントを合わせるわけですから、遠くも近くもくっきり見たい人だと満足できないケースもあります」(さど眼科[仙台市]の佐渡一成院長)

 運転手など遠くまでしっかり見えなければいけない職業や、日常的に細かい文字や数字を扱うなど、遠くや近くをはっきり見る必要のある人には適さないことがある。慣れるまで1週間から10日ほどかかり、乱視が強すぎて、合わないケースも。佐渡院長が言う。

「遠近両用コンタクトレンズの性能や見え方を理解し、仕事やライフスタイルに合っているかを眼科医と相談しながら見極めるべきでしょう。コンタクトレンズは自分で出し入れやケアができれば何歳になっても使えるし、家族など入れてくれる人がいれば大丈夫」

週刊朝日 2015年4月3日号より抜粋