大企業の親子喧嘩として注目を浴びる大塚家具。ホリエモンこと、実業家の堀江貴文氏は、喧嘩別れせずに一緒にやっていく方法もあったと指摘する。
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大塚家具のお家騒動が世間を騒がせている。実は私は大塚家具の大塚久美子さんとは旧知の仲だ。彼女の聡明さや経営手腕もある程度は理解しているつもりだ。お父さんとはお会いしたことはない。
一般的にいってこの手の騒動で有利に立つのは現経営陣である。まがりなりにも会社の経営権を持っているほうがプロキシファイト(委任状争奪戦)では有利になる。社内の情報にフリーにアクセスすることができるからだ。
恐らく今回の騒動で負けた側は会社を去ることになるだろう。お父さんは個人で、久美子さんは資産管理会社を通じて主要株主となっているため、新たな騒動の火種にもなりかねないし、どちらが勝つにせよ対策を打ってくるであろう。
今回の増配の発表は確かにお父さんへの退職慰労金代わりでもあるだろうし、現経営陣を応援する株主を増やすという点でもリーズナブルな施策だ。ただし両者とも支配株主というほどの割合を持っているわけではなく、常にM&Aされる可能性があることには変わりない。
ただし、その場合は同業者のM&Aよりも単に投資案件として考えてくるファンドなどの投資家が一番の候補であるだろう(値段も釣り上がる可能性がある)から、優秀な経営手腕を発揮してさえいれば、自分が追い出されることは考えにくい。
さて、肝心の経営戦略のほうを見てみると、お父さんのほうは旧来型の会員制ビジネスの維持が主眼である。大塚家具はそれなりに高級なブランドとして高齢者層には認知されているので、今までの手法がその層には響くだろう。また、中国の富裕層などにもそれなりに認知されているブランドではないだろうか。
特に欧米や日本の高級家具は日本で購入したほうが安いし、偽物もほとんどないと思われる。そういう意味でインバウンドの需要は今までのやり方でも十分取り込めるはず。もちろん中国人富裕層に向けたPRや中国語を話せる店員の育成は欠かせない。さらに中国の投資家を取り込むことができれば、プロキシファイトでも勝てるかもしれない。
現経営陣側の中期経営計画も発表されている。そこでは高級路線でも低価格路線でもない中間の部分を、まとめ買いではなく単品買いが主力になった若年層の取り込みと、北欧スタイルのセレクトショップや収納専門のブランドなど、それぞれ専門特化することで大型店との相乗効果を狙った戦略も盛り込まれている。日本人だけのマーケットを考えれば、新規ブランドの認知には課題があるものの、ある程度理解できる戦略である。
しかし、中国人富裕層などの、これまで取り込めていなかった太い客層からの集客を考えると、従来型のビジネスモデルもある程度手直しをしながら同時進行でいくのがいいかもしれないと感じた。
そんなわけで一緒に仲良くやっていくという選択肢もあり得たのではないだろうかと思うけど……時すでに遅しかもしれない。
※週刊朝日 2015年3月20日号