本誌連載筆者、北原みのりさんがわいせつ物公然陳列容疑で逮捕、釈放されて2カ月。ショックで言葉を失ったという北原さんは今、自分に何が起きたのかを考えている。なぜ逮捕されたのか、権力とは何か。逮捕を通して見えた日本の姿を、弁護を担当した村木一郎さんと語る。
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――昨年12月3日、北原さんは「わいせつ物公然陳列」の容疑で警視庁小岩署に逮捕された。北原さんが経営するセックスグッズショップに、「デコまん」という女性器をかたどった石膏にデコレーションを施したアート作品を飾ったことによる逮捕だった。
村木:北原さんのお店に、かつてアルバイトとして働いていたRさんと他の方がこしらえた「デコまん」を置いていただけなんです。場所が個人宅であれば公然陳列にはなりませんが、お店だった。お店と言っても看板出しているわけじゃないし、通りから見えるわけでもありませんから、ちょっと微妙だなと僕は思うんですが。
北原:オブジェとして置いていただけで販売もしていなかったんですけれどもね。
村木:押収された「デコまん」19個のうち、今回問題になったのは3点です。
北原:3点のうち2点は、Rさんの作品ではなかったため、Rさんが作るようにはうまくデコレーションがされてない。だから女性器そのものに見える人もいるかもしれません。
――Rさんは「デコまん」を作っているアーティスト。昨年7月12日、自身の女性器の3Dデータを頒布した容疑で逮捕された。Rさんは6日後の18日に勾留が取り消されて釈放。しかし12月3日、Rさんは3Dデータ頒布だけでなく、わいせつ物公然陳列などの容疑が加わって再逮捕(12月26日保釈)された。Rさんの1度目の逮捕の際、Rさんがアルバイトをしていた北原さんのお店も関係先として警察の家宅捜索が入った。
村木:北原さんのお店にガサ(家宅捜索)が入った後、警察から任意に北原さんに事情を聴きたいと呼び出しがあったのですが、北原さんは応じなかった。というのも、Rさんの1回目の釈放後、弁護団の方針でRさんは警察の呼び出しに応じておらず、加えて弁護団のお一人が北原さんも事情聴取に応じなくていいですよとアドバイスしていたんですね。
北原:私も甘く考えていました。3Dデータ頒布に関して私は何も知らないし、Rさんの逮捕は不当だと思っていたので、警察に協力したくなかったんです。
村木:そうしたら、北原さんにも正式に警察から呼び出し状が届いた。
北原:読んで驚きました。事件名が変わっていたんです。3Dデータ頒布ではなく、わいせつ物公然陳列罪とあり、被疑者が「R等」と複数になっていた。「私も被疑者ですか?」と警察に電話したら、あっさり「はい」と言われた。大変なことになっちゃった、と村木さんに連絡しました。
村木:北原さんには、このまま呼び出しに応じないと逮捕の可能性があると伝えました。
北原:すぐに警察に、出頭します、と連絡したのですが、日にちを調整している間に、逮捕されてしまいました。でも、なんで私、逮捕されたんでしょう?