村木:僕は13時に小岩署に行きました。逮捕から2時間後くらいですね。
北原:すぐ村木さんに「逮捕令状に『共謀し、わいせつ物を陳列』。共謀って何ですか?」と聞きました。「『デコまん』は、Rさんと話し合った上で陳列したんですよね?」と聞かれたので、「はい」と答えると、「それ、共謀です」と。司法の言葉はわかりません。
村木:その後、北原さんは女性の留置場がある東京湾岸署に留置され、2日間取り調べを受けました。5日に検察庁に身柄を送られ、検察官は勾留請求をした。6日、裁判官が勾留を認めない判断を出すのですが、すぐに検察官からこれに対して不服申し立てが出された。これも裁判官が棄却、20時過ぎに北原さんの釈放が決まりました。
■心が壊れていく留置場システム
北原:村木さんが一秒も無駄にせず動いてくださっている間、私は1日で半径3メートルも動かないような場所にいて。留置場に行くと、人間じゃなくなるんですね。身柄の「ガラ」と呼ばれます。移動するときに職員同士が「ガラ一本戻すよ」などと言う世界。息をしているだけで、追い詰められる気持ちになります。
――日本の留置場は、取り調べ時間や食事の時間などは警察の裁量に任されている。被疑者の行動は厳しく規制され、食事やトイレなど、生活は監視される。自白を強要しがちな環境で、国際人権規約に違反しているとの声もある。
北原:留置場が、というよりは、拘束されるつらさは、たった数日でも身体に残ります。特に、地裁や地検に行く日は、厳しかったです。まず外に出るという理由で、手首に食い込むほどきつく手錠をかけられる。そんなにきつく締めなくたって、どう考えても逃亡ができるとは思えないほど、完璧な監視システムなんですけどね。検察や地裁の部屋には時計がなく、時間を聞くことも許されず、その中で手錠をかけられたまま9時間近く硬いベンチに座らされていました。
村木:時間の情報を与えないことで不安にさせるんです。被疑者はずっと待つだけ。ゴールが見えないのはつらいですよね。
北原:ショックだったのは、外国人がすごく多かったこと。しかも日本語がうまくない人も多い。日本語ですら、自分が置かれている状況がきちんと説明されない状況なので、中にはパニックで過呼吸になっている人もいました。隣の人が両手錠のまま背中をさすろうとしてましたが、「ほっておいて」と職員が注意をする。
村木:北原さんが入った湾岸署は、羽田空港に近いので、違法薬物の密輸などで捕まる外国人も多いんです。
北原:私の印象では、羽田で捕まったというよりも、街で職務質問されて捕まった子がほとんどでした。