■逮捕でわかった権力の気味悪さ
北原:日本の逮捕は、有罪が決まる前から、制裁の意味合いが強いですよね。
村木:日本は良い憲法を持っています。たとえば憲法の「刑事人権規定」は、世界最高水準なんです。
北原:そうなんですか!?
村木:もしきちんと運用していれば、日本の留置場もこんな人権を無視するような場所にはなっていなかったでしょう。逃げられたら困る、証拠隠滅されたら困る、と思って安易に運用した結果なんです。
北原:責任を取らなくていいよう、管理と規律を強めるのは、警察だけの話ではなく、日本社会そのものに通じるように感じました。私は今回、権力はとても「男らしい」と感じたんです。間違いがあってはいけないし、間違っても認められない。そして逮捕されたら同じ人間としては扱われない。とても怖いです。
取り調べは、私がなぜ逮捕されたのかを直接聞ける機会だし、警察が考える「わいせつ」を知る場だと思って積極的に受けました。だけど、警察官に「(あなたの逮捕は)とばっちり」と言われたときは、あまりの率直さに驚きました。「もちろん、あなたに罪はあるけど」と付け足されましたが……。
――北原さんは12月6日に釈放され、略式起訴となった。今回の逮捕は、北原さんから言葉と、書く気力を失わせ、本誌の連載も休載が続いた。
北原:逮捕は国から切られ、社会から捨てられる経験です。権力の気味悪さは一生拭えないと思いますし、無理に拭う必要もないと思います。権力というのは、メンツをつぶされたと怒り、自分たちの正しさを全力で証明しようとするものです。権力は気味悪いって、これからの時代、意識したほうがいいとも思ったんです。「なぜ逮捕されたんだろう」と、毎日のように考えては、言葉を失い続けています。それでも、言葉を探していかなければと思っています。
※週刊朝日 2015年2月27日号