ドラマ評論家の成馬零一氏は、沢尻エリカが主演を務めた『ファースト・クラス』は今後もシリーズとして続いてほしいという。
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沢尻エリカが主演を務めた『ファースト・クラス』(フジテレビ系)はファッション雑誌編集部内での女の戦いを描いたドラマ。深夜枠ながらも話題となり、大きく注目された。
そして今回、時間帯を水曜夜10時に移動して、放送終了からわずか4カ月で第2期となる『ファーストクラス』がスタートした。
残念ながら平均視聴率は、同じ時間帯に放送されていた綾瀬はるか主演のドラマ『きょうは会社休みます。』(日本テレビ系)に惨敗だったが、ドラマは前作以上にゴージャスかつスタイリッシュで、作り手がノッているのが画面から伝わってくる。
今度の舞台はファッション業界。一流デザイナー・矢野竜子(夏木マリ)が社長として運営する老舗のファッションブランド「TATSUKO YANO」に吉成ちなみ(沢尻エリカ)は新人デザイナーとして赴任。しかし、そこでもまた、デザイナー同士が足を引っ張り合うマウンティング(格付けバトル)が繰り広げられていた。そんな中、ちなみはデザイナーたちと衝突しながらも、服を作る喜びを通じて結束を固めていく。
そこに、「TATSUKO YANO」を乗っ取ろうとするクリエイティブディレクターの廣木リカ(木村佳乃)とNGSホールディングスの間宮充(青柳翔)の謀略が絡み、そのとばっちりを受けて、ちなみが左遷されて受付嬢になったり、突然新ブランドの立ち上げにかかわったりと、登場人物の置かれている状況がコロコロ変わっていく。
前作でも、編集部内部での女同士の戦いと、雑誌の存続をめぐる企業買収の話が同時進行していた。とは言え、今回は企業買収の話が、あまりにめまぐるしく、敵と味方が次々と入れ替わっていくので見ている側の理解が追い付かない。
もちろん、何が起きているのか理解できなくても、ジェットコースター的に楽しむことができるのだが、とにかく映像と物語が過剰なのだ。
今度のキャッチコピーは「私含めて、全員悪女」。第1期の女同士のイジメ対決の面白さは脚本家の渡辺千穂の力によるところが大きかったが、今回は第1期のプロデューサーで、7話の演出を担当した及川博則が脚本を執筆している。
第1期に比べると演出家主導のドラマに見えるのはそのためか?
第1期でも、副音声で作品自体にツッコミを入れるなどのバラエティ的な演出が多く、その「悪ふざけ」がドラマ自体を破壊しかねない危うさがあったのだが、同じ「悪ふざけ」でも今回の演出は、むしろドラマの世界を支えるものとなっている。
LiLiCoのナレーションも、前作では、吉成ちなみのことを(沢尻)エリカと呼んでいたが、今回は役名のちなみで呼んでいる。“ドラマを作っているのだ”という作り手の意識の表れだろう。
チーフ演出の西浦正記は『リッチマン、プアウーマン』などで、おしゃれで先鋭的な演出を展開する、今一番面白いディレクターだ。下世話な世界をゴージャスな映像で見せてくれるという意味ではデビッド・フィンチャー監督の『ソーシャル・ネットワーク』や『ゴーン・ガール』にも通じるスタイリッシュかつ猥雑な世界観を構築している。
今回は残念ながら低視聴率となってしまったが、作品が持つポテンシャルはまだまだ高い。今後も沢尻エリカが次々と異業種業界を渡り歩いていくシリーズとして続いてほしい。
※週刊朝日 2015年1月2-9日号