介護の現状と課題をリアルに描き、話題を呼んだ漫画「ヘルプマン!」。漫画誌で一区切りを迎えたこの作品が、「ヘルプマン!!」と生まれ変わって、本誌新年号から連載スタートする。作者のくさか里樹(りき)さんと作家の林真理子さんが対談で介護のイメージを話した。
林:介護を取り上げた漫画って“ほのぼの4コマ”みたいなものが多い気がするんですが、「ヘルプマン!」は写実的で、あまりの迫力にびっくりしました。介護に排泄(はいせつ)ケアは欠かせませんが、ウンチをシリアスに描くのって難しいから、リアルな描き方が避けられてきたのかなと思ったんですが。
くさか:アンタッチャブルな面はありますが、みんな毎日してるんだし、あたりまえのものですよね。私、ウンチ大好きなんですよ。便秘症だから(笑)。
林:私もすごい便秘症なんですよ。
くさか:ウンチが出ることがすごく幸せなので、「さっきまでおなかにあったのに、出た瞬間そんなに嫌うなよ」って思ってしまうんです(笑)。表面のきれいなものだけじゃなくて、あたりまえのものをあたりまえに愛したほうがいいし、あるものはそのまま描いちゃえと思って。
林:なるほど。介護って、「一家崩壊」とかマイナスのイメージが強いですが、くさかさんは「介護はクリエーティブである」とおっしゃってますよね。
くさか:私は取材していくなかでそれを実感したんですが、伝えるのはなかなか難しいですね。
林:ポジティブにはとらえにくいですよ。「ボケたらどうしよう。ウンチだらけで、そこらへんをさまよい始めたら」とか、そんなことばっかり考えちゃいますし。
くさか:素晴らしいお仕事をされてるプロの方がたくさんいますから、そういう方の手を借りて適切なケアを受けたら、そこまで悲惨な状態にならずに済むと思うんです。家族がパニックになると本人もパニックになっちゃうし、それでどんどん悪くなってしまったり。「地獄だ」と思い込んだら、自分が損ですよね。
林:そうですけど……。
くさか:もちろん楽しいことばかりじゃありませんが、素敵なドラマって、認知症の方から生まれることが多いんです。話しかけてもほとんど反応がなかった寝たきりの人が、昔大好きだった音楽をかけてもらった瞬間、歌いだして笑いながら死んでいったとか。奇跡みたいな、でも本当はあたりまえかもしれない話が、山ほどあるんです。
林:へーえ。
くさか:だから私には花形役者さんにしか見えないんです、認知症の方って。
林:それはすごいですね。
※週刊朝日 2014年12月19日号より抜粋