連載中から反響を呼んだ本誌・山本朋史(ともふみ)記者(62)の実体験ルポ「ボケてたまるか!」が本になった。連載当時、編集部の若手が深刻そうに聞いてきた。「朋さん、本当にボケてきたんですか」。それは神様にもわからない。だから本人は調べることにした。本当にボケたのか、それとも治るのか。ユーモラスだけど、真剣な同時進行ルポである。
連載は反響を呼び、テレビやラジオに招かれ出演した。11月には東京で開かれた国際的な認知症サミットの後継イベントで、オープニングスピーチを無事に成功させてもいる。大仕事を終えてトイレに入り、ズボンのファスナーが開いていることに気が付いた。
「まさか!? オープニングスピーチのときから開いていた?」
長年の交友がある山藤章二さんは言った。
「バランスのとれたいい記者だけど、最終的にどんな分野に進むのかと思っていたら、『認知症』を獲得するとはね。読むと失敗ばかりしてるのもいい。ボケることへの恐怖を持っている人はたくさんいます。ボケるトップランナーとして頑張ってもらいたい」
26歳年上の画伯、安野光雅さんには今回、本の装画を描いていただいている。
「こんなこと言っていいのか、今まで朋さんが書いた記事のなかでいちばんいいんだよな。本当はボケてないのかな。でもたしかに探し物ばかりしてるし、僕より物忘れは激しい。それは間違いない」
※週刊朝日 2014年12月19日号より抜粋