今年に入り相次いで監督の交代劇が起きるプロ野球界。かつて自身も監督を務めた東尾修氏が、監督交代で必要な要素を指摘する。

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 これも時代の変わり目なのだろうか。監督交代の話だ。セ・リーグでは、広島が野村謙二郎監督(48)から緒方孝市(45)へ、ヤクルトも小川淳司監督(57)から真中満(43)へとバトンが渡された。パ・リーグではソフトバンクの秋山幸二監督(52)が辞任表明し、後任の最有力候補に私の西武時代の同僚だった工藤公康(51)の名が挙がっている(10月15日現在)。楽天、西武も今年、代行を務めた大久保博元(47)、田辺徳雄(48)がそれぞれ監督に昇格した。

 監督交代を決めた各球団は前監督からの若返りを図った。40代から50代前半の監督に代わったな。60代はDeNAの中畑清監督(60)だけになった。球界が新たな時代を迎えようとしている。

 ただ、若手に監督を託しただけで、チームが一気に変革することはない。当欄で何度も指摘しているように、フロントのバックアップが不可欠だ。特に監督が交代した球団は、リーグ優勝したソフトバンクをのぞいて、勝てなかった理由が必ずある。投手力なのか、打撃力なのか。はたまたチームプレーの揺らぎがあるのか。その弱点を、若い監督が明確に進言した時に、フロントが迅速に反応できるか。新監督の発言を軽視したら、チーム力アップのきっかけも失いかねないよ。

 かつては球団一筋20年みたいな選手が各球団にたくさんいて、10年前後、固定メンバーで戦えた。しかし、今は違う。フリーエージェント(FA)制度が確立したし、メジャーリーグへの移籍も格段に増えた。中心選手が10年満たずにチームを離れる状況になった。そうなると、同じ選手たちでチームを構成できる期間は一気に短くなる。チームを優勝できる状態にするには、以前の倍近いスピードで行わなければならない。だからこそ、フロントの決断、迅速な対応は、チーム力の大きな要素になる。

 もちろん、現場の監督にも同じ意識が必要だ。監督初経験となる若い監督は、最初から自分の色を出しにくい部分がある。でも、それでは1年を損してしまう。「1年目は」ではなく、「前半戦は」といった、チーム変革の見極めを早める必要がある。若手の資質を買っているのであれば、妥協せずに起用する。ベテラン選手の働き場所も見つけ、チームとして融合する作業を日々行う必要がある。

 もちろん、若手監督の利点はある。それは今の選手たちの気質を敏感に感じ取れることだ。どこに繊細なのか、投手なら調整のどこを重視するのか。昔ながらのアバウトな考えでは通用しない選手が増えている。より具体的なアドバイスができる点は大きい。だからこそ、だ。経験不足から来る遠慮よりも、自らの眼力を信じて、チーム力の向上策を打ち出してもらいたい。

 ただ、時代が流れても変わらない部分はある。一流選手に共通するストイックな部分だ。高い意識を持ち続けることができる選手は一握りしかいない。あとは首脳陣が徹底して指導するしかない。そのためには厳しさも必要になるよ。若くて動ける監督は、グラウンド内外で妥協しない姿勢を年間を通じて見せ続けることが大切になる。

 そしてメディアへの対応かな。勝つことでファンを喜ばせるという側面も確かにあるけど、今は女性ファンも増えている。マスコミを通じて、ファンへの発信力も期待したい。

週刊朝日  2014年10月31日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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