プロゴルファーの丸山茂樹氏が、最近出会った2人のトップアスリートについて話した。

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 早いもので10月ですね。2014年もあと3カ月。みなさん、やり残しはありませんかー。

 僕は先日、BS朝日さんの番組でボクシングの村田諒太選手(28)と対談してきました。

 村田君は12年、ロンドン・オリンピックのミドル級で優勝して、一躍時の人になりました。13年にプロへ転向。ここまで5戦5勝で、うち4勝がKOと、目標である世界チャンピオンへ着実にステップアップしてきています。

 彼とは初対面だったんですけど、対談してみての印象は、ボクシングが大好きで、その気持ちにまっすぐに生きてきてるなというものでした。

 20代の若者の雰囲気を漂わせながらも、「僕が僕が」みたいなところがないのは意外でしたね。どんどん前に出てくる感じじゃなくて、こっちの話をしっかり聞いた上で、ゆったりした関西弁交じりの言葉で返してくる。柔軟性がある子だなあ、と思いました。最近の若手アスリートっぽい、とも言えるのかな?

 村田君の話の中でビックリしたのが、ボクサーには「倒れグセ」というのがあるってこと。

 ノックアウト級の倒され方をすると、そのパンチを受けた瞬間の映像が頭に焼き付くんですって。すると後日、試合でよく似たシーンに出くわすと、たいして強いパンチでなくても倒されてしまうことがあるんだって!

 彼によれば、「脳が倒されたことを覚えてしまってるんでしょうね」と。そこまで聞いて、僕もいま苦しんでますけど、ゴルフのイップスに似てるのかなと感じました。アスリート同士で話してると、こういう話が次々に出てきて、止まらなくなっちゃうんですよね。実体験に基づいた話ばかりだから、面白くて。この収録のときも予定時間をオーバーして、90分ぐらい話してましたもん。

 27歳でプロに転向した村田君だけに、「時間がない」ってことも強調してましたね。「ボクシングはいつまでもやれるわけじゃなくて、僕も長くてあと4~5年しか頑張れないと思うんです」と。その中で世界チャンピオンにならないといけない。しかも世界で最も選手層が厚いと言われるミドル級ですからね。

 ミドル級を含めた中量級といえば、僕の若いころはアメリカのトーマス・ハーンズがスーパースターでね。いま日本の世界チャンピオンは軽量級に集中してるだけに、ミドル級と聞くとなんだか懐かしさもあってね。ぜひ頑張ってほしいですよね! 「世界といえば村田」と言われる存在になってほしいです。

 最近は、車いすテニスの国枝慎吾選手(30)とも言葉を交わすチャンスがありました。先日の全米オープンでシングルス、ダブルスともに優勝。何せ、4大大会のシングルスで16度の優勝ですからね。彼の積み上げてきたものの凄(すご)さたるや……。あの上半身なんて、身長190センチある屈強な男の体つきに匹敵しますよ。どれだけ努力してるか、一瞬で理解できました。

 2人のトップアスリートに会えて、素晴らしい刺激をもらいました。「彼らはこう考えてるんだよ」って話も、いろんなところで発信していきたいですね。

週刊朝日  2014年10月10日号

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