代理出産の盛んなタイで、実業家の日本人男性A氏(24)が複数の代理母と契約し、16人もの子どもをもうけたとされる騒動が拡大している。常識では測りかねる壮大な“家族計画”を語ったA氏とはどんな人物か──。
タイ警察が公表したA氏の氏名は、莫大な個人資産を持つとされる、東証1部上場企業のオーナー創業者の長男のものだ。
A氏は会社の大株主にも名を連ねている。
だが、現地のコンドミニアム周辺でたびたび目撃されたA氏の姿は、“大富豪”のイメージとは違う。
「A氏は月に数回、姿を見せていたが職業は不明。Tシャツに短パン姿で、金持ちという雰囲気ではなかった。目立つことが嫌いなようで、帽子とマスクをつけて人目を避けるようにしていた」(地元住人)
一方でA氏には、ビジネスマンという顔もあった。2012年には、ドイツで設立された携帯電話用のソフト会社に出資し、同社のサイトに写真が掲載されていたと香港紙が報じている。
「A氏は香港の大学を卒業。香港で金融コンサルタントの名刺を持ち歩き、仲間とともに投資を募っていた。おカネには持論があり、『幅広く分散して効率よくカネを増やしたい』と、ヨーロッパやオーストラリアにも投資先を探しに出かけていた。仕事熱心だが実家や日本の話はほとんどせず、『資産があるので目立ちたくない。父が有名で得することは何もない』と言っていた」(A氏を知る人物)
その一方、別の関係者はこう証言する。
「カンボジアで、貧しい人々に小口で資金を融資するマイクロファイナンス事業にかかわっていた」
A氏はタイ、インド、カンボジア、香港などの出入国を頻繁に繰り返していたという。NPO法人日本不妊予防協会理事長の久保春海氏はこう言う。
「日本人の代理出産の利用先は、東南アジアが圧倒的に多い。米国などでも受けられるが、コストが高い。東南アジアではインドとタイが盛んで、次いでフィリピン、カンボジアなどでも行われている。東南アジアは日本とともに『アジア太平洋生殖医学会』というグループをつくって生殖医療全般について研究しており、技術レベルは高い」
(今西憲之/本誌・小泉耕平、牧野めぐみ)
※週刊朝日 2014年8月29日号より抜粋