“鬼才”と呼ばれ、厳しい演技指導で知られる映画監督の園子温さんと、その作品で開花した女優・神楽坂恵さんのカップル。お会いしてみると作品のイメージとは違い、優しくロマンチストな夫とサッパリ気質の妻、という印象だ。3年目となる結婚生活は、愛とサプライズにあふれているようで……。
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夫「出会いは2009年。共通の友人の紹介です。下北沢のバーに呼び出されて行ったら彼女が来て。あ、キレイな人だなと思った」
妻「あらっ(笑)。ありがとうございます」
夫「女優さんだと聞いて『今度、僕の映画に出てください』って言ったんだ。それも2本。僕、普段そういうこと言わないんですよ。珍しいこと言うなと自分でも思った。それに当時は僕、まだヒマだったからボクシングをやりだしていて、お酒を一滴も飲んでなかった。だから酒の席でのノリとかではないんです」
妻「私は周りの人から『監督はお酒飲んで暴れるよ』とか、『気をつけなよ』とか言われていて。でも会ってみたらお酒も全然やらないし、雰囲気がクールで静かでイメージと違っていた。でも映画に出ないかと言われても、すぐに『はい』とは言えなくて」
夫「いつも女の子に会うたびにそんなこと言ってんじゃないか、って」
妻「普通、警戒しますよね」
夫「そんなのいちいち言ってたらきりがないから、言わないよ」
妻「監督の作品は以前から見ていました。実は出会う2年くらい前に、子温さんが監督して私が初めて脱ぐ、という企画があったんです。その企画は結局流れてしまったんですが、すごく残念で、なんだか勝手に“失恋”した気持ちになっていたんです。そんなとき本人に会って『愛のむきだし見た?』って言われて。『まだ見てないです』『じゃあDVD貸すから』と。それでメールで連絡を取るようになった」
夫「でもちゃんと付き合うまでは、だいぶ時間がかかったよね。まあいままではナイショにしていたけど、『冷たい熱帯魚』を撮る直前くらいには、告白してた」
妻「あ、それ言っちゃうの?(笑)」
夫「もういいじゃん。でも当時、彼女はグラビアタレントから女優になる途上だったんで、女性として愛してるとか以前に『この映画で明確に印象づけてやろう』という“愛”のほうが強かった。現場で厳しくして、いまでは悪かったなあと思うけど」
妻「きつかったですよ。でも怖いというより『嫌われたくない』という意識が強かったですね。付き合っているからこそ、女優としてダメだったら全てが壊れる、と思っていた」
夫が撮った11年公開の映画「冷たい熱帯魚」と「恋の罪」で、妻は見事に複数の映画祭の助演女優賞を受賞。そのころ、夫は満を持してプロポーズを計画する。演出の懲りようは、さすが監督というか……。
妻「全然気づかなかった」
夫「けっこう、ぼんやりした子なんで(笑)。で、見事ベネチアに行くことになって、でも映画祭なんてどうだっていいの。とにかく早く、夕方のゴンドラのシチュエーションを作んなきゃなんないから」
妻「向こうでのインタビュー中もずっと、『俺、ゴンドラ乗りたい、ゴンドラ乗りたい』って」
夫「なんとかスケジュールどおりにゴンドラに乗って、うまく教会の鐘が鳴るようなタイミングにして……で、指輪のケースを取り出してパッと彼女の目の前で開けたら、指輪がなかった! 『落としたんか~!?』って焦ったら、ケースを裏返しにして開けてた(笑)」
妻「ふたの側に指輪がついてて」
夫「そしたら彼女がポロポロ泣きだして。大成功ですよ。上下間違えた以外は」
妻「もうびっくりして。そんなにいろいろ計画するタイプだとは思わなかったから、ロマンチックだなあと。この間も私の誕生日にサプライズでケーキを買ってきてくれたんだよね。でも、台所の扉がすこ~し開いてて……」
夫「奥でコソコソとロウソクに火を付けてるのが丸見えだった(笑)」
※週刊朝日 2014年7月25日号より抜粋