戦後70年間、守ってきた日本のブランド、平和国家がついに破られた。安倍政権は集団的自衛権の行使容認を閣議決定した。
今回の閣議決定で自衛隊が海外の紛争地に送り込まれる可能性が高まったのは間違いない。ただ、それには現実の体制が追いついていないとの指摘もある。軍事ジャーナリストの清谷信一氏がこう語る。
「例えば普通の国なら、負傷者への縫合手術や投薬などの応急処置的な治療は衛生兵がその場の判断で行える。ところが自衛隊では、医師の資格を持つ医官の指示がないとできない。このまま紛争地に出たら、米軍で犠牲者が1人出るような事態で、自衛隊では10人の犠牲者が出てもおかしくありません。自衛隊にはこうした制度上の不備がまだたくさんあるのです」
未熟な体制のまま紛争地に赴き、自衛隊員に犠牲者が出たらどうなるのか。防衛庁で教育訓練局長などを務めた小池清彦・新潟県加茂市長はこう懸念する。
「海外派兵で多くの犠牲者が出れば、若者は自衛隊に入るのを躊躇するようになる。そうなれば、隊員数の維持のため徴兵制を導入せざるを得なくなる。自民党の一部の政治家は以前から『若者に1年間、奉仕活動を義務づけろ』などと主張していますが、これなどは徴兵制に容易につながる発想。徴兵制の導入は決して絵空事とは言えません」