最近、中高年がやけに若々しい。ファッションや趣味を自由に楽しんだり、第一線で働き続けていたり。ちょっと前までは「おじいさん」「おばあさん」と呼ばれた年代なのに、見た目もココロの持ちようも違ってきた気がする。人生の春を謳歌する“新しい大人”たちの、若返りの理由を探った。

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 例えば芸能界を見てみよう。小泉今日子さん48歳、黒木瞳さん53歳、ダウンタウンの浜田雅功さん、松本人志さんがそろって50歳。松任谷由実さんが60歳の還暦を迎え、タモリさんは68歳、高倉健さんは83歳になった。

 年齢よりも若く感じられる人が多いのではないか。世代全体が若返っている──。そんな指摘は方々から聞こえてくる。

「60歳を過ぎても働くことが当たり前になり、女性も趣味や仕事を自由に楽しむようになりました。いくつになっても『人生これから』という感覚が広がっている。変化を起こしたのは『団塊の世代』です」

 そう語るのは、博報堂新しい大人文化研究所の阪本節郎所長だ。団塊世代は今年65~67歳。戦後、47~49年の第1次ベビーブームで生まれ、各年250万人以上ずついる。

 物心ついたときには高度経済成長期。青春時代はビートルズを聴いて過ごし、社会に出た女性たちは「OL」と呼ばれてもてはやされた。趣味も生き方もファッションも、常に新しいものを真っ先に取り入れてきた。

「見合い結婚より、恋愛結婚が一般的になって、女性がより主体的になったのも団塊世代から。多くの同級生のなかで埋没しないよう、全ての局面で努力し続けてきたエネルギーあふれる集団です」(阪本所長)

 一方、常に最先端を走ってきたせいか、「老いる」感覚に疎いともとらえられるデータがある。

 電通総研が2013年2~3月、首都圏の60~79歳の男女約500人を対象に「気持ちの上の年齢」を調べた結果、60歳代の男性(平均実年齢64.4歳)の気持ち年齢の平均は55.2歳だった。70歳代男性(平均実年齢74歳)は62.6歳で、実に10歳以上も若いことがわかった。

 女性にも同じ傾向がみられ、60歳代(平均実年齢64.3歳)の気持ち年齢の平均は55歳、70歳代(平均実年齢74.1歳)では63.4歳だった。

 同総研消費者研究部の斉藤徹部長は、こうした実感の背景には現役年齢の延びがあるとみている。

「今の50歳代以上の感覚は、これまでと明らかに違う。定年退職が1970年代まで55歳が一般的だったのに対し、いまや65歳まで引き上げられようとしている。いつまでも社会とつながっているのも一因でしょう」

週刊朝日  2014年5月9・16日号より抜粋