手術や放射線治療を受けた後に残る縫合の痕や皮膚の乾燥、色素沈着などで、温泉やプールなどを楽しめない……。そんな人たちにとっては朗報だ。

 湘南記念病院かまくら乳がんセンター(鎌倉市)では、乳がんや甲状腺がんの患者にスキンケアを指導し、驚くべき効果を上げている。

 治療後のスキンケアの重要性を訴える同センター・センター長の土井卓子医師は言う。

「今の乳がんの手術では、なるべく創がわからないよう乳輪の縁やわきの下などを切開しますが、それでも放射線治療を組み合わせると、皮膚が硬くなり、ひきつれたり、黒っぽくなったり。気持ちがふさぐからと手術痕を見ない患者さんも少なくありません」

 一般に放射線治療はピンポイント治療のため、副作用が起こりにくいとされる。だが、皮膚へのダメージは大きい。真皮や表皮、汗や皮脂を分泌する汗腺や皮脂腺が焼けてしまうからだ。新陳代謝によって皮膚が新しく生まれ変わるまでに数週間ほどかかり、その上、元通りの皮膚に戻らないケースも多い。乾燥によるかゆみなども出る。

「そのような場合でも、セルフケアで皮膚に皮脂の代わりとなるオイルや保湿剤を塗るだけで、新陳代謝が早まり、皮膚の状態が改善されます」(土井医師)

 土井医師が勧めるのは入浴後のケアだ。保湿剤とオイル状の化粧品を順番に塗るというもの。これらの化粧品は、低刺激で伸びが良いものなら、いつも使っているもので十分だという。

 オイル化粧品は日本人にはなじみが薄いが、土井医師はこんな検証をした。

 乳がんと甲状腺がんの術後の患者19人(33~69歳)に、植物成分やビタミンなどが配合されたオイル化粧品「バイオイル」(ジャンパール)を創部に毎日塗ってもらった。

 塗り始めてから3カ月後、患者に創部の様子について聞き取ったところ、乾燥の改善は93%、色素沈着の改善は77%、ひきつれの改善は50%が「満足」と答えた。医師の評価でも、84%でケロイドが薄くなり目立たなくなったり、赤みがとれたりしていた。悪化した例はゼロだ。

「手術や放射線治療をすると周辺の知覚神経がダメージを受けるため、術後や治療後に知覚マヒが起こりやすい。今回は、そのマヒも改善していました。オイルを塗る際にマッサージしたことも、皮膚の状態を改善させるのに役立ったのではないでしょうか」(同)

 このほかにも、患者自身が創部をしっかり観察できるようになり、手術痕も含めて自分の体であることを自覚し、いたわる気持ちが出たとの効果もあった。

「患者さんの多くは、顔のお手入れには気を使っても、創部のケアに関してはとかく医師や看護師に任せがち。ですが、創部のケアも患者さんが自ら実践しなければダメ。皮膚の状態がある程度落ち着いてから、毎日、根気よく続けることが大事です」(同)

週刊朝日  2014年5月9・16日号より抜粋

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