千葉県がんセンター(矢島鉄也病院長)消化器外科に所属するA医師(男性)が起こした2例の医療事故についてまとめられた「院内医療事故調査委員会報告書」と内部資料を本誌が入手した。そこには医療費の不正請求の実態が記録されていた。

 本誌が入手した内部資料には、2例目の患者が亡くなった翌日の1月24日に緊急対策会議が開かれ、そのやり取りが生々しく記されていた。

<事務局長 保険適応外の手術であると聞いた。開腹で届けて保険請求している。保険適応外の手術で事故が起きると、その都度、訴えられるのではと心配をせざるを得ない>

 事務局長は、保険外手術の危険性をA医師からキチンと受けていなかった遺族が事実を知れば、訴訟になりかねないと危惧しているのだ。さらにこう続く。

<B医師 保険請求上では、懸念があるということであると……

C部長 事務局長が心配しているのは、このような事例で、家族から訴えが出た場合に、別の視点からラパロ(注・腹腔鏡下手術のこと)を保険請求外(ママ)でやっているということがオープンになる。そうなると保険請求上それは認められていないため、どうなるのかと……別の視点から、今まで請求していた分を返せと言われる……>

 万が一、遺族が訴訟すれば、カルテ、レセプト(診療報酬の明細書)などが法廷で開示され、“不正請求”が明らかになり、保険適用にした医療費の返還を求められる、と心配していた。

<事務局長 カルテを持ち込まれれば、全て分かってしまう。不正請求でチェックされてしまう。保険についてもこのような問題があるということを頭に入れておく>

 今回の2例は当初、保険外の腹腔鏡下手術を行った後、出血などのトラブルが起こったため、急きょ、保険適用される開腹手術に切り替えたという経緯だ。

 保険外の手術と保険適用の手術が混在する場合、「混合診療」となる。

 千葉県で医療機関に対する診療報酬の指導・監査をする関東信越厚生局千葉事務所指導課の担当者は、混合診療についてこう見解を述べた。

「混合診療は原則として保険請求はできません。手術以外の治療も含めて、すべて患者負担となります」

 大学病院に勤務する外科医もこう言う。

「保険外の腹腔鏡下手術をやり、途中で開腹手術に切り替え、保険請求したら、健保組合などから後に全額返せと言われたケースも過去、ありました」

(本誌・西岡千史)

週刊朝日  2014年5月2日号より抜粋

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