集団的自衛権の行使容認、靖国神社参拝、憲法改正、原発再稼働など重要案件を抱える安倍政権にとって宗教界との関係は、今後の選挙で死活問題になる。ところが、ここにきて今まで自民党に友好的だった多くの宗教団体が、安倍晋三首相(59)の“右傾化する政権運営”に懸念を示し、その関係がギクシャクし始めた。
連立与党の公明党、山口那津男代表は3月25日の会見で、安倍首相側近、萩生田光一総裁特別補佐の言動に対し、語気を強めた。
「与党の一員として、ひいきの引き倒しのような言動は厳に慎むべき」
慰安婦問題をめぐる、河野洋平官房長官談話の検証を受け、「新事実が見つかれば、新たな談話を検討すべき」との考えを示した萩生田氏に猛省を迫ったのだ。
一方、懸案だった日米韓の首脳会談を無事、終えた安倍首相は「与党と相談の上、閣議決定し、国会で議論を行いたい」と集団的自衛権の行使容認に強い意欲を燃やす。
首相の私的諮問機関は4月にも行使容認を求める報告書を首相に提出する予定で、6月には政府案がまとまり、国会会期末(6月22日)までに憲法解釈の変更を閣議決定する予定だ。
だが、公明党の山口代表はここでもくぎを刺した。
「国民生活に関わりが深い、優先すべき課題がある」
これには前段がある。
公明党の漆原良夫国会対策委員長が自身のメールマガジン“うるマガ”で与党幹部としては異例の首相批判を展開したのだ。
「総理のこの考えは、『国民の声を聴く』という一番大切な部分が欠落しており、私は、到底賛成できません」
公明党の反発の背景には公明党の支持母体である創価学会の意向がうかがえる。
「昨年末の靖国参拝以降、安倍さんの右傾化に歯止めが利かなくなっている感じですね。集団的自衛権、憲法改正をにらみ、安倍さんは『自分に従うか、与党を去るか』と公明党に踏み絵を踏ませようとしている」(創価学会幹部)
とはいえ来春の統一地方選を控え、公明党との選挙協力は欠かせない。
創価学会票を当てにする自民党は公明党の意向を無視できないのが現実だ。
「政権離脱するのは簡単だが、政治は右に行くだけ。わが党が牽制役になることで、安倍政権が突っ走るのを抑えられる。どちらが日本のためになるかと考えたら、妥協をしても、政権に残るほうが影響を及ぼせる」(公明党幹部)
本誌取材班 鈴木エイト/本誌・小泉耕平、福田雄一
※週刊朝日 2014年4月11日号