伊勢丹の「カリスマバイヤー」として名をはせた参院議員の藤巻幸夫さんが3月15日、出血性ショックで亡くなった。54歳だった。本誌で「虎穴に入らずんばフジマキに聞け」を連載中の兄・健史さんが弟の「明るく太く短い人生」を語った。
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人生の転機ではわたしに相談してきました。就職する際には伊勢丹と生命保険会社に内定をもらっていたので、「おまえの性格なら伊勢丹だよな」と背中を押しました。福助に移るにあたっても、先方から「営業の責任者で」と打診があったのを「だめだ。社長なら入ると言ってこい」と返すと、本当に社長を務めることに。
とにかく仕事が大好き。日曜日の夕方にアニメ番組「サザエさん」を見ると、ふつうなら翌日からの仕事を考えてブルーになるものでしょう。でも幸夫は「明日働く」と思うと、うれしくてしょうがなかった。
この調子で、最後の最後まで休みなく動き回っていました。議員になってからも、日本の文化を海外に売り込むアイデアを観光庁などに提案していました。先輩議員らに「そんなに働いていると、まずいよ」と繰り返し忠告されたほどです。
人に会って話をするのも好きな明るいやつでした。幸夫の周りは人であふれていました。食べるのも好きで、1日に接待が三つあっても、3食すべて完食してしまう。どんどん太り、「腹で風を切って歩いている」と、からかったことも。
仕事も猪突猛進、食事も猪突猛進。バイタリティーがありすぎたから、太くて短い人生になってしまった。
「結いの党」の結党に参加し、幸夫が会派を移ったことで、1月に始まった通常国会から本会議場の席が隣どうしになりました。幸夫が元気だったら二人並んで座れたのです。しかし幸夫はICUから出られず、着席したら立てる幸夫の名札はずっと倒れたままでした。
※週刊朝日 2014年4月4日号