不景気を追い風に人気を高めた「地方国公立大学」の人気高騰が止まらない。学費や生活費の安さという“消極的”な理由で学生を集めるだけでなく、就職率のよさなどが高く評価されるようになったのだ。「駅弁大学」と揶揄された時代とは異なる、その「実力」をご紹介する。

『就活下剋上』(幻冬舎新書)などの著書がある大学研究家の山内太地氏は、企業の地方国公立大へ向ける視線が変わってきているという。

「私立文系の受験科目は3教科ですが、国公立は5教科が基本。よく勉強しているため、企業の中には、都市部の私大生より、地方の国公立大の学生を積極的に採用しようとする動きもあります」

 地方国公立大の就職の「実力」を調べるため、本誌は全国の国公立大にアンケートを実施した。有効な回答があった地方の国公立大55校のデータを分析して、「正社員就職者数」 の卒業生に占める割合、「正社員率」でランキングにした。すると、秋田の国際教養大は90%を超える正社員率で、週刊朝日2月21日号で紹介した「著名400社就職率ランキング」(大学通信調べ)でトップだった一橋大を上回った。国際教養大だけでなく、富山県立大、九州工業大、帯広畜産大など9位までの地方国公立大で、卒業生の8割以上が正社員になっていた。

 大手ヘッドハンティング会社「サーチファーム・ジャパン」の社長を務め、自らも16年間、ヘッドハンティングを担当している武元康明氏は、地方国公立大の学生についてこう話す。

「素直な学生が多く、会社の『カラー』を吸収してくれるという評価も耳にします。企業側が『育てたい』と可能性を見いだすケースが少なくないようです」

 武元氏によると、地方の国公立大は総合的な教育が主流なため、優れたゼネラリストが輩出する伝統があるという。

「ヘッドハンティングで声をかけさせていただくOBも多いですね。業界としては製造、小売り、流通、サービスに目立ち、印象に残っている大学は信州、金沢、広島、長崎大でしょうか」

 もっとも、地方の大学に通う学生が、都市部で就職活動をするには不利な面もあるだろう。実際、奈良女子大に通う3年生が、地方学生のハンディキャップを打ち明ける。

「就活が始まり、月に2回ほど東京に行って、説明会や面接を受けていますが、交通費だけで貯金がなくなってしまいます。やはり東京での就活では、首都圏の大学に通ったほうが便利だとも痛感しています」

 ただし、それに打ち勝つ“強い精神”が、プラスに働くという指摘もある。

「経済界で活躍する地方国公立大学OBは、大学とは別の都市に就職した人が大多数です。やはり『自分が住んだことのない大都市で働きたい』との意欲をもつことが、人材としての成長に寄与したのではないでしょうか」(前出の武元氏)

週刊朝日  2014年3月14日号