なぜ無責任さに拍車がかかったのか…(※イメージ)
なぜ無責任さに拍車がかかったのか…(※イメージ)
この記事の写真をすべて見る

 裁判傍聴が趣味というフリーライターの北尾トロ氏。北尾氏は過去にとある夫婦が我が子を死体遺棄した事件の法廷に足を運んだ。長男、次男を次々に捨て続けた夫婦は、ついに3人目も遺棄してしまう。

*  *  *

 子どもを作っては捨てることを繰り返した夫婦の裁判。3人目の子ども(2010年、長女)は出生届さえ提出されなかった。育てる気がなかったのである。長男出生時には20歳前後だったふたりも30歳近い大人になっている。それなのに、無責任さに拍車がかかっているのが驚きだ。

 計画では出産後、病院に置き去りにするつもりだったが、自宅トイレで出産したため方針変更。公園に捨てることにした。理由を尋ねる弁護人に、夫はゴミでも出すように言い放つ。「長男のことが発覚するのが怖くて、捨ててしまいました」

 妻の月収は約25万円。とりたてて貧乏だったわけではないし、ヒモ状態の夫が働けばさらに収入アップが見込める。経済的なことが要因ではないのだ。弁護人としては、せめて反省の弁を引き出しておきたい。そこで、そもそも妊娠しないようにすべきだったのではないかと問いかけた。なぜ懲りずに作るのか。法廷にいる全員が聞きたいことである。

 が、返ってきたのは気が抜けるような答えだった。

「ゴムをつけたりつけなかったり、まあ、それが良くなかったのかと。膣外射精はしていました」

 してないからできるんだよ! この男の辞書に計画性という言葉はないのか。ふたりは生後数時間の長女を民家の玄関前に捨て、あっさりと逃げ帰る。家に電気がついていたから、すぐ気づいてくれると思ったという。確信犯だ。運よく発見されて病院に搬送、命に別状がなかったのがせめてもの救いだった。

次のページ